飲酒運転防止のために安全運転管理者が知っておきたいこと

2022年4月から、白ナンバー事業者におけるアルコールチェックの義務化が施行され、安全運転管理者の選任義務のある事業者(5台以上の自動車を使用等)においては、運転業務の前後にアルコールチェックの確認・記録する業務が必須になりました。
本コラム「飲酒運転防止のために知っておきたいこと」では、社会課題である飲酒運転の撲滅に向けて、基本に立ち返り、飲酒運転とは?に関する基礎知識を整理しましたのでご紹介いたします。

  • 2022/07/07 公開

目次

  1. 1. 飲酒運転事故の現状
  2. 2. 飲酒が及ぼす運転への影響
    1. 飲酒運転とは?
  3. 3. 飲酒運転の行政処分と罰則
    1. ① 酒酔い運転
    2. ② 酒気帯び運転
    3. <運転者の罰則>
    4. <運転者の行政処分>
  4. 4. 飲酒運転で罰則が提供されるのは運転者だけでない
    1. ●車両の提供者(運転者と同様の罰則)
    2. ●酒類の提供者・車両の同乗者
  5. 5.安全運転管理者によるアルコールチェック
  6. 6. 飲酒運転撲滅に向けて


1. 飲酒運転事故の現状

内閣府 令和4年度交通安全白書によると、
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r04kou_haku/index_zenbun_pdf.html
令和 3年中の飲酒運転による死亡事故は152件、重症事故は288件発生しております。
飲酒運転撲滅に対する行政処分の強化、社会課題として飲酒運転撲滅に向けた取り組みなど、飲酒運転による交通事故は年々減少しているものの、依然として悲惨な交通事故は後を絶たない現状です。

(図表1:飲酒運転による交通事故発生件数及び交通死亡事故件数の推移)

出典:令和4年版交通安全白書(内閣府)



2. 飲酒が及ぼす運転への影響

警察庁による)飲酒有無別の死亡事故率を見ると、飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしの約9.2倍(令和3年)と極めて高く、飲酒運転による交通事故は死亡事故に繋がる危険性が高いことがわかります。

(図表2:死亡事故率比較(令和3年)警察庁)

出典:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」(警察庁)より作成



飲酒運転とは?

飲酒運転は、ビールや日本酒などの酒類やアルコールを含む飲食物を摂取し、体内にアルコールが残っている状態で運転することです。アルコールには麻痺作用があり、脳の働きを麻痺させます。酔うと、血中のアルコール濃度が高くなることにより、大脳皮質の活動をコントロールしている部分が麻痺した状態になります。
飲酒時には、安全運転に必要な情報処理能力、注意力、判断力が低下している状態になります。「気が大きくなり速度超過などの危険な運転をする」、「車間距離の判断を誤る」、「危険の察知が遅れたり、危険を察知してからブレーキペダルを踏むまでの時間が長くなる」など、交通事故に結びつく危険性を高めます。
また、お酒に弱いといわれるひとだけでなく、強いといわれる人でも、低濃度のアルコールで運転操作等に影響を及ぼすことが各種調査研究により明らかになっております。

(参考資料)

(ア)「低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究」
(科学警察研究所交通安全研究)
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/insyuunten/kakeiken-kenkyu.pdf

(イ)「アルコールが運転に与える影響の調査研究の概要」
(公益財団法人交通事故総合分析センター)
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/insyuunten/koutsuuziko-kenkyu.pdf



3. 飲酒運転の行政処分と罰則

飲酒運転には、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類があり、それぞれに厳しい行政処分、罰則が定められています。



① 酒酔い運転

アルコールの影響により、車両の正常な運転ができない状態で運転することをいいます。具体的には、蛇行運転をする、標識を守れない、まっすぐに歩けない、受け答えがおかしいなど客観的に見て酔っている状態があたります。



② 酒気帯び運転

体内に呼気(吐き出す息のこと)1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上含んだ状態で車両を運転することをいいます。



<運転者の罰則>

①酒酔い運転 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②酒気帯び運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金


<運転者の行政処分>

①酒酔い運転 正常に運転できない状態 35点 免許取消 欠格期間3年
②酒気帯び運転 呼気1リットル中のアルコール濃度0.25mg以上 25点 免許取消 欠格期間2年
呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満 13点 免許停止90日

※すべて前歴、およびその他の累積点数がない場合
※欠格期間とは、免許取り消しになった後、再度免許の取得が許されない期間のことさらに死亡事故を起こした場合7年、さらにひき逃げをした場合は10年に



4. 飲酒運転で罰則が提供されるのは運転者だけでない

飲酒運転者本人はもちろん、車両やお酒の提供者、あるいは運転者が飲酒していることを知りながら車両に同乗した人も厳しい罰則が科せられます。さらに免許保有者は免許停止または免許取消しになる場合があります。



●車両の提供者(運転者と同様の罰則)

①運転者が酒酔い運転 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②運転者が酒気帯び運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金


●酒類の提供者・車両の同乗者

①運転者が酒酔い運転 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
②運転者が酒気帯び運転 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

このように、飲酒運転をしてしまうと、本人はもちろん周りの人の人生にも影響が出てしまうことを理解しておくことが必要です

(参考資料)
飲酒運転には厳しい行政処分と罰則が!(警察庁)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/img/r4insyu_leaflet_ura.pdf

飲酒運転は道路交通法違反の中でも悪質な違反行為なので、不起訴処分や無罪判決にならない限りは前科が付きます。さらにアルコール等の影響で正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を死傷させた場合は「危険運転致死傷罪」として15年以下の懲役に処せられます。
ちなみに、酒気帯び運転および酒酔い運転時に事故をおこした場合、自分のケガや車両の破損に関して自動車保険の支払いを求めることはできません。



5.安全運転管理者によるアルコールチェック

アルコールチェック義務化の対象が拡大された背景には、2021年6月、千葉県八街市で飲酒運転のトラックにはねられ、下校中の児童5名が死傷した事故があります。当時トラックは白ナンバーであったため、運転前のアルコールチェックは実施されていませんでした。
2022年の4月より、安全運転管理者を有する白ナンバー事業者もアルコールチェックが義務化され、運転前後における酒気帯び有無の確認及び記録の保存が必要となりました。さらに10月からは、アルコール検知器を用いての確認が必要になります。
ドライバーを雇用する事業者側は、この義務化を機に、これまで実施していなかった事業所でのアルコールチェックも日常業務のひとつとして組み込む必要があります。日常業務として確実に実施することは、飲酒運転の抑止力となり、リスクを未然に排除できるメリットがあります。
もちろんドライバー自身が自主的に注意することも必要です。同時に、事業者として飲酒運転を生じさせない体制づくりが重要となってきます。
最近では、多くのメーカーがアルコール検知器を販売しておりますが、呼気中のアルコールの有無や濃度を、音や光もしくは数値で正しく示すことができる機器であれば問題ありません。またアルコールチェックの測定結果を1年間管理する必要があります。

<記録として残す8つの内容>

  1. 確認者名
  2. 運転者
  3. 運転者の業務に係る自動車の自動登録番号または識別できる記号、番号等
  4. 確認の日時
  5. 確認の方法 (対面でない場合は具体的方法)
  6. 酒気帯びの有無
  7. 指示事項
  8. その他必要な事項

記録については、手書きベースのアナログ形式でも問題ありませんが、あとからの確認や見直しなどを考えるとデータ形式で保存するスタイルの方をおすすめします。
検知器の中には、検査した結果を自動で記録するものや、専用のシステムと連携できるものもあります。また、アルコール検知器の機種に関わらず、クラウドにて記録・管理するサービスもあります。
管理するドライバーの人数、頻度、費用帯効果なども鑑み、自社に最適な手段を選択する形から始められればよいと思います。また、アルコール検知器などは、測定回数などに応じて寿命があり、買い替えなども発生しますので、その点も検討する際の留意ポイントなります。
それ以外にも、アルコールを摂取していなくても検知器に反応してしまうような飲食物や生活雑貨などもあるため注意が必要です。同様に、感染対策の手指消毒用アルコールの取り扱いにも注意が必要です。注意点についても事前に把握し、徹底しておくようにしましょう。



6. 飲酒運転撲滅に向けて

企業の管理担当者は、白ナンバーのアルコールチェック義務化(10月からのアルコール検知器を使用してのチェック)に向けて検知器・サービス導入に奔走されていると思料致します。
飲酒運転を根絶するためには、飲酒運転が非常に危険な行為であることを十分理解した上で、運転者とその周囲の人が、飲酒運転は「しない」「させない」という強い意志を持ち、皆で協力することが大切になります。
ドライバー自身の意識はもちろんですが、雇用する企業側も前日の飲酒を控えるように促すことはもちろん、義務化されたアルコールチェックについても機材・サービスをしっかり使って履行することをおすすめします。
悲惨な事故につながりかねない飲酒運転は、多くの人生を巻き込んでしまいます。トラブルやリスクを避けるためにも日常的なアルコールチェックの徹底と意識づけが重要となります。いま一度、飲酒運転に関する社内教育会等での再徹底を含め、飲酒運転撲滅に向けて取り組んでいただければ幸いです。
弊社でも飲酒運転撲滅に向けてアルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』を4月より開始しております。さまざまなアルコール検知器に対応してアルコールチェック実施管理ができるサービスです。
飲酒運転撲滅の一躍になれればと願っております。


https://alc.aiotcloud.co.jp//

(参考情報)

担当M.T.

監修者 宇徳 浩二(うとく こうじ)

2002年シャープ入社。携帯電話のソフトウエア開発部門にて、スマートフォンのシステム開発等従事。
その後、AIソリューションの開発責任者として、シャープのAIoT(AI+IoT)のAI開発をけん引。
2022年AIoTクラウドにてプロダクトマネージャーに就任し、アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』、WIZIoT(ウィジオ)遠隔監視サービスなどのSaaSサービスのプロダクトを創出。
AI、IoTを活用したソリューションやサービスに携わる者として、社内外の講演、セミナーに登壇をするなどAI、IoT、SaaSビジネスに関して発信している。

宇徳 浩二