【 2023年4月道路交通法改正】自転車ヘルメット着用の努力義務や自動運転レベル4解禁について

道路交通法ってご存じですか?私たちの生活にとって身近な法律の1つです。運転免許の取得にあたって教習所で学んでいますが、細かな規定や例外などもあり、正確に把握するのは難しいかもしれません。また社会問題や交通の最新情勢に応じて改正が行われています。内容を把握できておらず違反してしまう方もいるかもしれません。政府は2022年12月20日の閣議で、改正道路交通法(以下、改正道交法)の施行日を2023年4月1日とすることなどを定めた一連の関連政令を決定しました。本コラムでは、2023年4月1日から施行される改正道交法の主なポイントを中心に、道路交通法の概要、アルコールチェック義務化の現状に関して紹介します。

  • 2023/01/27 公開

目次

  1. 1. 道路交通法とは?
  2. 2. 2023年4月1日施行される主な内容
    1. ◆◆自転車乗車時のヘルメット着用努力義務◆◆
    2. ◆◆自動運転「レベル4」解禁◆◆
  3. 3. 自転車乗車時のヘルメット着用努力義務
  4. 4. 自動運転レベル4解禁
    1. ■レベル4の自動運転移動サービスを「特定自動運行」として規定
    2. ■自動走行ロボットは「遠隔操作型小型車」として届出制に
  5. 5. (義務化延期中)白アンバーのアルコールチェッカー使用義務化はいつ?
  6. まとめ


1. 道路交通法とは?

道路交通法は、1960年に制定され、車両の運転者や歩行者が道路において守るべきルールを定めるとともに、交通安全のための各種規則を定めた法律になります。
(第1条)にて「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害防止に資することを目的とする」と規定されております。主に、歩行者の通行方法、車両及び路面電車の交通方法、運転者及び使用者の義務、道路の使用等、自動車及び原動機付自転車の運転免許、罰則、販促行為に関する処理手続の特例等が定められています。

また道路交通法の制定以降、道路交通におけるさまざまな情勢に対応して数多くの改正が行われてきています。1978年には飲酒運転の取り締まりの強化、集団暴走行為の取り締まり、1990年には違法駐車規則の強化、2001年にはひき逃げ罰則の強化なども行われております。
警察庁によれば、令和3年の道路交通法違反の取締まり件数は554万6,115件で、悪質性・危険性の高い違反としては、最高速度違反が106万4,818件、酒酔い・酒気帯び運転が1万9,801件、無免許運転が1万8,844件等であり、かなり数の違反が発生しています。

出典:令和4年交通安全白書(内閣府)

道路交通法に違反すると、その違反内容により行政処分、刑事処分が下されます。



2. 2023年4月1日施行される主な内容

◆◆自転車乗車時のヘルメット着用努力義務◆◆

自転車に乗るときも全員にヘルメットの着用が努力義務として課せられることになりました。自転車乗車時のヘルメット着用は2008年に実施された改正道交法で、13歳未満の児童や幼児が乗るときに被らせるように保護者への努力義務が定められましたが、新たな改正道交法では、2023年4月1日以降、自転車に運転する人全員に対象を広げ「被るように努めなければならない」という規定になりました。

◆◆自動運転「レベル4」解禁◆◆

特定の条件下で運転を安全に自動化する自動運転の「レべル4」の運行許可制度が盛り込まれたほか、自動配送ロボットを運行する事業者の届出制度も2023年4月1日に解禁されます。レベル4の運行許可制度は、自家用車は対象外で、人口減少が進む地域で遠隔監視のもと特定のルートを無人で走る巡回バスなどを想定しているという。都道府県公安委員会に申請できるようになるようです。



3. 自転車乗車時のヘルメット着用努力義務

2023年4月から、年齢を問わず自転車にのるすべての人にヘルメット着用が努力義務化されます。13歳未満の児童や幼児を対象には2008年から努力義務化されていましたが、大人を含む全利用者が対象になります。罰則のない努力義務ではありますが、特に自転車通勤制度を導入している企業などでは、対応を放置しておくことNGです。行政からの指導を受けることにもなりかねません。法令遵守に向け、自転車通勤者、社員に徹底しいく必要があります。

警察庁の統計では、過去5年間の自転車事故の死亡者のうち、約6割の1,237人が頭部致命傷を負っていたとのことで、致死率はヘルメットを着けていた人に比べ約2.2倍に上るとのことです。ヘルメット着用すれば死亡者が減少しますので心がけましょう



道路交通法(第63条の11)の変更点

  • (改訂前)
    【児童又は幼児を保護する責任のある者の厳守事項】
    児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
  • (改定後:2023年4月1日~)
    【自転車の運転者等の遵守事項】
    1. 自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。
    2. 自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
    3. 児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

これにより、電動アシスト自転車、一般自転車などすべての自転車乗車中に「ヘルメット着用が努力義務」となることで、2023年3月には、法人・個人を含め全国で自転車用ヘルメットを購入される方が施行前に集中することも予想されます。施行直前では、入手困難になることもあるかもしれません。早めの準備をおすすめします。

出典:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/poster.html



4. 自動運転レベル4解禁

改正道交法では、新たに「特定自動運行」「遠隔操作型小型車」について法整備がなされています。

■レベル4の自動運転移動サービスを「特定自動運行」として規定

「特定自動運行」とは、運転者がいないレベル4相当の自動運転を意味します。人が介在することなく走行し、万が一の際も自ら安全に停止する機能を備えた自動運転車の運行になります。
改正道交法では、この「特定自動運行」の許可制度が規定されました。レベル4の自動運転移動サービスを行う者は、特定自動運行計画を策定し、都道府県公安委員会に申請・審査を受ける必要があります。

自家用車用途ではなく、レベル4移動サービス用途などを意図した内容となっており、自動運転移動サービスを行うとする事業者を「特定自動運行実施者」と位置付け、サービスなどに関わる者を「特定自動運行業務従事者」としています。「特定自動運行業務従事者」には、運行を担当する責任者「特定自動運行主任者」や、交通事故の場合に現場に急行し道路における危険防止措置を行う「現場措置業務実施者」を指定・選任し、教育しなければなりません。
「特定自動運行」はドライバーレス走行を可能になることで、人の移動やモノの輸送などさまざまな用途に応用されていくものと考えられております。特に地方部のおける路線バスなどへの導入から拡がっていくものと予想されます。

■自動走行ロボットは「遠隔操作型小型車」として届出制に

公道を走行するロボット宅配などは「遠隔操作型小型車」と区分され、安全性を確保するため、宅配ロボットの最高速度は時速6km以下と設定、歩道を通り、信号に従うなど歩行者と同様のルールを守るようにしています。

サイズは長さ120cm、幅70cm、高さ120cm(ヘッドサポートを除いた部分)を超えないことや、ふれた歩行者がけがをするような鋭利な突出部がないことなども規定しています。更に非常停止装置の基準として、押しボタン式に限定し、取り付けてある場所がすぐにわかるように周囲の部分と色を変えることや、指定する標識をロボット本体に取り付けることも盛りこまれています。

「遠隔操作型小型車」は届出制で、通行させようとする場所を管轄する都道府県公安委員会に事前に届出を行う必要があります。宅配ロボットを使う事業者は、走行する公道を管轄している都道府県公安委員会へサービス開始前に通行するルートや非常停止装置の位置などを届け出ておくよう義務付けています。



5. (義務化延期中)白アンバーのアルコールチェッカー使用義務化はいつ?

2022年4月から開始しているアルコールチェック義務化において、10月から施行予定であったアルコールチェッカーの使用義務化の延期について、警察庁より正式発表がありました。アルコールチェッカーが市場に流通する見通しが立たないため当面延期(時期は未定)とのことです。警察庁の考え方として、十分な数のアルコール検知器が市場に流通するようになる見通しが立った時点で、再度、道路交通法施行規則を改正し、できるだけ早期に適用したいとのことです。また警察庁より「既にアルコール検知器を入手することができた事業所にあっては、法令上の義務ではないが、これを用いた運転者の酒気帯びの有無の確認を行なっていただきたい」とのコメントもあります。

アルコールチェッカーの使用義務化は延期になっていますが、市場流通の見通しが立てば早期に適用していたいとの警察庁のコメントにある通り、いつ義務化されてもおかしくない状態が近づいていると予想しております。当社商談においても、アルコールチェッカーを入手できないというお客様の声は減少しているように感じております。アルコールチェッカーはできる限り早く入手し、適切な管理方法を導入することをおすすめします。



まとめ

我々の生活に身近な道路交通法に関して、よくご存じでない方も多いのではないでしょうか?法律をすべて把握することは困難だと思いますが、日々のニュースなどをキッカケに、道路交通法を意識するように心がけていただければ幸いです。2022年4月の白ナンバーのアルコールチェック義務化が施行された際、アルコールチェッカーが入手できない状態が続き、2022年10月の使用義務化が当面延期ということになりました。自転車のヘルメット着用の努力義務においても早めの準備をおすすめします。2023年4月のレベル4自動運転により、地方の路線バス採算問題や遠隔地の宅配など、顕在化している様々な社会課題の解決に加え、新たなビジネスの拡大も拡がればと期待しております。

担当M.T.