運行管理者とは?役割と業務内容・試験や基礎講習についても解説

運行管理者は、業務上で使用するトラックやバスの安全運行に欠かせない重要な役割を担っています。本記事では、運行管理者の役割や業務内容のほか、運行管理者なるための要件、運行管理者試験の受験資格や日程などについて詳しく解説していきます。運行管理者を適切に選任するために、企業の担当者はぜひ参考にしてみてください。
なお、白ナンバー車両を保有する企業の担当者は「安全運転管理者」についてもチェックしてみましょう。

  • 2024/09/18 公開


目次

  1. 運行管理者とは?役割や必要性
  2. 運行管理者の主な業務内容
  3. 運行管理者の配置人数と配置した後に必要な届出
  4. 運行管理者になるための要件
  5. 運行管理者試験の概要
  6. 運行管理者にふさわしい人材
  7. 運行管理者は今後「2024年問題」に対応していくことが求められる
  8. 運行管理者についてよくある質問
  9. 運行管理者はドライバーの運転と公衆の安全を守る重要な仕事


運行管理者とは?役割や必要性

運行管理者とは、緑ナンバー(※)の車両を使用する自動車運送事業者の事業所において、車両の運行を安全かつ効率的に管理する責任者です。運行管理者は国家資格であるため、取得するには一定の要件を満たす必要があります。

法律で定められた運行管理者制度に基づき、事業者は事業所内の車両の台数に応じた人数の運行管理者を配置しなければなりません。配置を怠った場合、道路運送法や貨物自動車運送事業法に則り罰則を受けます。

運行管理者は、事業所における安全運行を確保するために、多岐にわたる業務を担当します。次章は運行管理者の主な業務を解説しますので、詳しく見ていきましょう。

※緑ナンバー:有償で人や貨物を運ぶ自動車に取り付けられている緑地に白文字のナンバープレート



運行管理者の主な業務内容

運行管理者は、道路運送法および貨物自動車運送事業法に規定されたさまざまな業務を担当します。運行管理者の主な業務内容は以下のとおりです。


◾️ 運転計画の管理

運転管理者の業務内容として、車両のルート選定や運行スケジュールの作成など、運転計画の管理があります。加えて、運転者の労務管理も重要な業務です。運転計画を整理し、適正なシフト作成を行って運転者の業務量をコントロールする必要があります。


◾️ 乗車記録の管理

運転者が実際に運転した距離と時間を記録・保管する業務も担います。運転者の業務量を把握し、シフトとの乖離がないか、過重労働になっていないかを確認しなければなりません。乗車記録は、1 年間保存する必要があります。

また、乗車記録は、確認資料として行政や運輸局に提出する場合もあります。


◾️ 運転者への監督・指導

運転者一人ひとりの職務状況を把握し、改善点があれば指導するのも運転管理者の重要な業務です。たとえば、長時間労働や休憩不足などが見られた際の指導や、スピードの出し過ぎや荷物の過積載など、安全に支障をきたす行為への指導を行います。

また、運転者の運転技術・安全意識を高めるために講習やトレーニングも行います。


◾️ 業務前後の運転者の健康状態の把握

運転管理者は、業務の前後に点呼を行い、運転者の健康状態やアルコール摂取の有無、免許証の携帯、身だしなみなどを確認・記録します。点呼の際、体調不良などに気づいた場合は、無理をさせず休ませなければなりません。

特に飲酒運転を防ぐためのアルコールチェックは重要です。近年では、効率的なアルコールチェックと管理を行えるサービスも登場してきています。


◾️ 交通事故時の対応

交通事故が発生した場合、運行管理者は迅速かつ適切な対応を行う必要があります。まずは、事故の状況を正確に把握し、事故の続発防止、乗客の安全の確保、安全な場所への退避、負傷者への救護措置などを運転者へ指示しなければなりません。

その後、速やかに関係機関への連絡を行い、指示を受けます。



運行管理者の配置人数と配置した後に必要な届出

事業者が配置しなければならない運行管理者の人数は、事業で使用する車両の台数によって変わります。運行管理者の配置後に必要な届出とあわせて詳しく見ていきましょう。


◾️ 運行管理者の配置人数

運送事業者は、国土交通省が指定する人数の運行管理者を事業所に配置しなければなりません。配置人数は、事業所の運行車両の数によって決まります。旅客自動車運送事業者の場合は、貸切か乗合・乗用かによって異なります。

貨物自動車運送事業者
(トラック等)
  • 保有車両29両まで1名
    以降30両ごとに1名追加
旅客自動車運送事業者
(バス、タクシー等)
  • 貸切:保有車両29両まで1名
    以降30両ごとに1名追加
  • 乗合、乗用: 保有車両39両まで1名
    以降40両ごとに1名追加

いずれの場合も、最低1名の配置が必要です。また、事業所ごとに複数の運行管理者を配置した場合は、統括運行管理者も選任する必要があります。


◾️ 運行管理者を配置した後に必要な届出

運行管理者を配置した場合、旅客事業者は15日以内に、貨物事業者は1週間以内に所轄の運輸局に届出を行う必要があります。運輸局の指定する様式に従って届出を行います。なお、届出は選任時だけでなく、変更・解任した際にも行わなければなりません。

届出を怠った場合は罰則があるため、遅滞なく手続きを行いましょう。



運行管理者になるための要件

届出をすれば誰でも運行管理者になれるわけではなく、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 運行管理者試験に合格している
  • 一定の条件を満たしている

それぞれ詳しく見ていきましょう。


◾️ 運行管理者試験に合格している

公益財団法人運行管理者センターが行っている運行管理者試験に合格すれば、運行管理者の資格を取得できます。試験では、運行管理に関する法令、運行管理者に必要な実務上の知識及び能力や技能を問う問題が出題されます。

なお、試験を受験するには以下の要件を満たしていなければなりません。

【運行管理者試験の受験資格】

  1. 運行管理に関して1年以上の実務経験を有する。
  2. 基礎講習を修了している。

出典:公益社団法人運行管理者試験センター「運行管理者とは」


◾️ 一定の条件を満たしている

事業用自動車の運行管理に関する実務経験が5年以上あれば、運行管理者試験を受験せずとも運行管理者の資格を取得できます。ただし、期間中に所定の講習を5回以上受講し、そのうち少なくとも1回は基礎講習であることが条件です。

実務経験は、運行管理に関する実務経験証明書を提出して証明します。複数の実務経験の期間を合算して5年以上の要件を満たす場合には、すべての事業者に記載してもらう必要があります。



運行管理者試験の概要

運行管理者になるための要件とされている「運行管理者試験の合格」について見ていきましょう。運行管理者試験は年2回実施され、それぞれ1ヶ月程度の期間が設けられています。ここでは、令和6年度に実施される運行管理者試験の概要を紹介します。


◾️ 受験資格

下記のいずれかを満たしていることが、受験するための条件です。

実務経験1年以上

試験⽇の前⽇までに、以下のどちらかの1年以上の実務経験を有する

  • ⾃動⾞運送事業(貨物軽⾃動⾞運送事業を除く)の⽤に供する事業⽤⾃動⾞
  • 特定第⼆種貨物利⽤運送事業者の事業⽤⾃動⾞(緑のナンバーの⾞)
基礎講習修了または修了予定
  • 国土交通大臣が認定する講習実施機関において、平成7年4月1日以降の貨物、旅客の試験に応じた基礎講習の修了者
  • 試験⽇の2週間前までに基礎講習修了予定の者

◾️ 試験要項(令和6年)

試験日 令和6年8月3日(土)~9月1日(日)
申請期間 令和6年6月10日(月)〜7月10日(水)
申請方法 Web申請
受験手数料
  • 受験手数料:6,000円(非課税)
  • システム利用料:660円(税込)
  • 試験結果レポート:140円(税込)
    ※試験結果レポートは希望者のみ

支払い方法は、クレジットカード・コンビニ払い・ペイジー支払いから選択可能


◾️ 出題内容

試験は、貨物試験と旅客試験の2種類に分かれており、それぞれの関係法令や運行管理者の業務に関して必要な実務上の知識及び能力を問う問題が出題されます。法令改正があった場合、施行後6ヶ月間は改正前後で解答が異なる問題は出題されません。


◾️ 出題形式

運行管理者試験の出題形式は、2021年からパソコンを使用して試験を受けるCBT(コンピュータベーステスト)方式が採用されており、試験会場も全国各地に設置されています。筆記試験は実施されておらず、問題はパソコンの画面に表示され、マウスなどで解答します。

受験者は合否を早期に確認でき、試験結果の迅速なフィードバックが可能です。



運行管理者にふさわしい人材

  • リスク管理能力がある
  • コミュニケーション能力がある
  • コンプライアンス意識が高い
  • 最新技術への理解がある

運行管理者になる資格を満たしているほか、業務内容に適性のある人を選任することが重要です。では、運行管理者どのような人が向いているのでしょうか。ここでは、運行管理者にふさわしい人材の特徴を紹介するため、選任する際の参考にしてみてください。


◾️ リスク管理能力がある

運行管理者には、交通事故やトラブルを未然に防ぐための高い洞察力と迅速な判断力が必要です。そのため、潜在的な危険を予測し、対策を講じられるリスク管理能力が求められます。リスク管理能力が高い運行管理者は、緊急時にも冷静に対応できます。

先を見越して予測を立てられ、トラブルにも落ち着いて対応できる人は、運行管理者に向いているといえるでしょう。


◾️ コミュニケーション能力がある

運行管理者は、社内外問わずさまざまな人と連携して業務を遂行する必要があります。運転者への監督・指導の業務においては、年齢や勤務年数、性格が異なる運転者をまとめ、一人ひとりと適切にコミュニケーションをとることが求められます。

そのため、良好な人間関係を構築できる優れたコミュニケーション能力が不可欠です。日頃から運転者や他のスタッフと円滑に情報共有をすることが、安全運行の基盤となります。


◾️ コンプライアンス意識が高い

運行管理者は、運転者と公衆の安全を守るために法令遵守を徹底しなければなりません。法令違反は、個人の責任が問われるだけでなく、企業にとっても重大なリスクとなります。常に最新の法規制に目を配り、適切な対応を行うことが運行管理者の責務です。

そのため、責任感が強く、コンプライアンス意識が高い人が運行管理者としてふさわしいといえるでしょう。


◾️ 最新技術への理解がある

近年では、運行管理業務の効率化や安全性の向上を図る目的で、GPSやテレマティクスなどの最新技術を導入する動きが加速しています。そのため、運行管理者はこれらの技術を正しく理解し、適切に運用していかなければなりません。

時代の変化、技術の進化に適応できる能力は、運行管理者にとって今後ますます必要になってくるでしょう。



運行管理者は今後「2024年問題」に対応していくことが求められる

運行管理者には、上記のような能力や知識が求められるほか、今後は「2024年問題」に対応する力も必要となってきます。

2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間と制限されたことにより、物流業界が抱える様々な問題の総称です。

2024年問題により、物流業界において「輸送能力の低下」や「ドライバーの人材不足」、また「運賃の上昇」などが懸念されています。運賃が上昇することにより、消費者の負担も増えてしまう可能性もあるでしょう。

事業所の運行管理者は、このような問題を改善していくために、さまざまな対策を講じていくことが期待されています。

以下の記事では、2024年問題に関するより詳しい概要や、具体的な対処法について解説しているので、担当者の方は参考にご覧ください。



運行管理者についてよくある質問

  • Q. 運行管理者はドライバーと兼任できる?
    A. 貨物の場合、運行管理者がドライバーを兼務することは可能です。ただし、自らが車両を運転する場合は、自分で自分を点呼することができないため、運行管理補助者の選任が別途必要となります。
    旅客の場合は、最低1名運転業務に従事しない運行管理者が必要です。
  • Q. 運行管理者の補助者とは?どのような仕事ができる?
    A. 運行管理者の補助者とは、運行管理者の指示のもと業務の一部において補助を行う者です。主に運行管理者が不在の際にドライバー点呼を行います。ただし、点呼実施回数のうち補助者が行える回数は3分の2未満です。
    また運行管理補助者は、「運行管理者証を取得している」か「国土交通大臣が認定する基礎講習の修了者」であることが必要とされます。
  • Q. 運行管理者の資格は一度取得すればずっと有効?
    A. 運行管理者の資格に有効期限はなく、基本的に更新手続きなどを行う必要はありません。ただし、運行管理者に選任されたら、2年に1回講習を受講することが義務付けられています。
    また、点呼の未実施や名義貸しなどの重大な違反行為を行った場合、運行管理者資格の取り消し・返納を命じられます。
  • Q. 運行管理者と安全運転管理者の違いは?
    A. 運行管理者は業務用車両である「緑ナンバー」を管理するのに対し、安全運転管理者は自家用自動車である「白ナンバー」を管理するという違いがあります。また、配置人数などの規定も異なります。
    なお、運行管理者を選任・配置していれば、安全運転管理者を選任する必要はありません。


運行管理者はドライバーの運転と公衆の安全を守る重要な仕事

運行管理者は、貨物や旅客車両の安全運行のための重要な役割を担う仕事です。業務は多岐にわたり、資格を取得するには一定の実務経験を積んだ上で運行管理者試験に合格する必要があります。

運行管理者は、法令に基づいて運転者の労務管理や安全管理を行うため、遵法意識が不可欠です。また、責任感を持って仕事に取り組む姿勢や、多くの人と円滑にコミュニケーションをとれる能力も求められます。

近年、飲酒運転が厳罰化され、車両点呼時のアルコールチェックなど飲酒運転の根絶に向けての取り組みが強化されています。これは、運転管理者のみならず、白ナンバーを管理する安全運転管理者にとっても重要な業務です。

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