直行直帰・出張におけるアルコールチェックはどうする? 実施のポイントと業務負担を減らす工夫

2022年4月から始まったアルコールチェックを実施するにあたり、直行直帰する場合や、出張で社用車を使用する場合のチェック方法に関して、どうすべきか悩まれている事業者、安全運転管理者も多いのではないでしょうか?道路交通法の基本的な改正項目は理解しているが、運転手が直行直帰・出張時にどのようにアルコールチェックを行なったらよいのか、誰が行えばよいのかわからない状態では、実際に困ってしまうこともあると思います。本コラムでは、直行直帰・出張時のアルコールチェック対応ポイントについてご紹介します。

  • 2022/10/12 公開
  • 2024/4/24 更新

目次

  1. 1章 アルコール検知器を使用したアルコールチェック義務化が開始
  2. 2章 直行直帰・出張時に押さえておくべきポイント
    1. ◆直行直帰とは?
    2. ◆アルコールチェックのタイミングは?
    3. ◆直行直帰・出張時は、対面以外のチェック方法も許可されている?
    4. ◆電子メール等での報告はNG?
    5. ◆チェックするのは安全運転管理者以外でも問題ない?
    6. ◆ 安全運転管理者は、確認項目(以下8項目)の記録管理が必要(1年保管)
    7. ◆その他、留意事項
  3. 3章.業務負担を減らす工夫、事業者・安全運転管理者が準備すべきこと
    1. ◆すぐ出来ることから着手その①<紙の記録簿の工夫、エクセルデータ共有>
    2. ◆すぐ出来ることから着手その②<確認者を増やす>
    3. ◆すぐ出来ることから着手その③<時間外労働、当番制などのルール策定>
    4. ◆アルコールチェックの記録はデータで残せるものを選ぶ
  4. 4章 アナログからデジタルへ。「クラウド型管理サービス」をおすすめ
    1. ◆アルコール検知器一体型サービス
    2. ◆検査結果をスマートフォンアプリで登録管理するタイプ
    3. ◆アルコールチェック業務をアウトソーシングする
  5. 5章 まとめ


1章 アルコール検知器を使用したアルコールチェック義務化が開始

2023年12月にアルコール検知器を使用したアルコールチェック義務化がはじまり、12月のタイミングに合わせてアルコール検知器を導入された企業様も多いのではないでしょうか。

取り急ぎアルコール検知器だけを導入し、紙やエクセル管理している企業様の中で、義務化以降に新たな課題が見えてきていることがわかりました。

その中でもお悩みの方が多い「直行直帰」や「出張時」のアルコールチェックについて、次項から詳しくご紹介していきます。直行直帰や出張が多い企業様は必見です!

また、出張の際にレンタカーを活用する機会が多い企業様に向けてレンタカー使用に関するコラムやダウンロードいただけるQA集もご用意しています。ぜひダウンロードしてご活用ください!



2章 直行直帰・出張時に押さえておくべきポイント

アルコールチェックは、原則として安全運転管理者による対面での酒気帯びの有無の確認が必要です。

運転者の顔色、呼気のにおい、応答の声の調子等を目視等で確認する必要があります。

しかし直行直帰・出張先での運転などの場合、安全運転管理者による対面での確認は困難です。ここでは、直行直帰・出張時のアルコールチェック方法についてご紹介します。



◆直行直帰とは?

直行直帰とは、業務開始前および終了後に、会社(事業所)に立ち寄らない業務形態です。出社せずに自宅から直接、お客様先や作業現場などに出向き、業務が終了したら直接自宅に帰ることを言います。「自宅から営業先や作業現場に向かうほうが早い」「会社(事業所)に立ち寄ると業務効率が悪い」場合が対象になります。

また出張先等で、レンタカーを運転し業務をする場合などもアルコールチェック義務化の対象になることがあります。(※1事業所あたり5台以上の社用車を保有している場合)



◆アルコールチェックのタイミングは?

直行直帰・出張時の場合でも、アルコールチェックは運転の前後、つまり業務開始前と終了後のタイミングでおこないます。



◆直行直帰・出張時は、対面以外のチェック方法も許可されている?

安全運転管理者等が、対面で酒気帯びを確認できない時の例外として「対面に準じた方法」が許可されています。



◆電子メール等での報告はNG?

電子メール・FAX等、直接対話ができない方法によるものは、対面での確認に準じた方法には該当しないとされています。そのため、直行直帰・出張等のある場合には事前にその方法を定めておくことが必要です。



◆チェックするのは安全運転管理者以外でも問題ない?

安全運転管理者がアルコールチェックを行うことが難しい場合もあります。これについて、警察庁の通知文書によれば「安全運転管理者の不在時など、安全運転管理者による確認が困難な場合には、副安全運転管理者または安全運転管理者の業務を補助するものに酒気帯び運転の確認をさせることは問題ない」とされています。

また、複数事業所がある場合には、他の事業所の安全運転管理者がアルコールチェックを行い、電話で従業員が所属する事業所の安全運転管理者に報告させることも認められています。直行直帰等の場合には、安全運転管理者以外の者による確認も視野に入れておくとよいかもしれません。



◆安全運転管理者は、確認項目(以下8項目)の記録管理が必要(1年保管)

※記録フォーマットについては、手書き・電子データのどちらも認められています。
(参照)道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者業務の拡充について(通達)



◆その他、留意事項

アルコールチェックは義務なので、直行直帰・出張時とはいえ、確認を怠ると安全運転管理者の業務違反になります。確認不備による直接的な罰則は現状ありませんが、公安委員会によって安全運転管理者の解任や、命令違反に対する罰則が科せられる恐れもあり注意が必要です。

勤務者の出退勤が早朝や深夜になり、管理者による確認が困難となることも考えられます。そういった場合にも、管理者の確認は原則必須です。会社は、安全運転管理者の配置や記録管理の業務効率化など、負荷を減らすための配慮が必要です。

アルコールチェックの怠慢により運転者が飲酒運転をした場合には、道路交通法の「酒気帯び運転等の違反行為」として運転者だけでなく、代表者・運転管理責任者にも3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が発生する可能性もあります。加えて、違反に使用された自動車は6か月以内の範囲で、使用禁止となることもあり得ます。さらには、運転者が酒気帯びの状態であると知りながら社用車の運転を指示した場合には、使用者・管理者の管理不足となり、刑事責任に問われる可能性もあります。

直行直帰時に押さえておくべきポイント



3章.業務負担を減らす工夫 、事業者・安全運転管理者が準備すべきこと

直行直帰・出張等の業務が多い事業所では、アルコールチェック義務化によってかなりの負担を強いられることになります。企業は、飲酒運転撲滅に向けて、アルコールチェック義務化対応をしっかり遵守する必要があります。多くの事業者は、アルコール検知器を入手して、すぐに始められる紙の記録簿で運用を開始されているのではないでしょうか?運用をはじめてみて、下記のような課題を感じてはないでしょうか?

  • 「直直帰・出張、休日深夜などのリアルタイムの確認が大変」
  • 「検知器の導入、定期的な買い替えなどの運用コスト負担の懸念」

自社のアルコールチェック運用等を見直し、実情にあった体制を構築することが必要です。その際、管理する運転者の人数、利用頻度、勤務体系などを鑑み、最適な運用ルール・体制を構築することができれば、業務負担を削減し、効率化することも可能です。
(直行直帰・出張時を加味した運用の見直し)



◆すぐ出来ることから着手その①<紙の記録簿の工夫、エクセルデータ共有>

1年間保存すべき記録簿を、従来から義務付けられている「運転日誌」と合体させることで運転日誌との二重管理は回避できます。(※フォーマット自体は、警視庁、各県警などのHP上でも例示されており、自社に合わせた修正をして使用することができます。)

上記の記録簿をエクセル等で作成し、紙に印刷して使用する場合が一般的と思われますが、紙を使用すると確認・記録が事後にならざるを得ません。そこで、記録簿自体を社内イントラ上に置き、スマホまたはPCで入力できるようにすれば負担は減少します。



◆すぐ出来ることから着手その②<確認者を増やす>

アルコールチェックの確認は安全運転管理者がしなければなりませんが、他の社員が安全運転管理者の補助者としてチェックを行うことは可能とされており、例えば運転者や総務担当者が交代で行なえば、一部の社員に負担が集中することを回避できます。



◆すぐ出来ることから着手その③<時間外労働、当番制などのルール策定>

直行直帰・出張、休日深夜などの確認は、安全運転管理者の負担が増大します。安全運転管理者の始業前時刻での確認対応時間、終業時刻から電話がかかるまでの待ち時間や、その対応時間等が、時間外労働とみなされる可能があります。時間外上限規制の順守や、時間外手当の増加を抑える必要があります。



◆アルコールチェックの記録はデータで残せるものを選ぶ

直行直帰・出張時など、アルコールチェック結果の記録や情報のとりまとめ、環境整備など負担が高いと感じる方も多いと思います。アルコールチェックの記録はデータで管理すると手間が減って非常に楽になります。また、紙で管理すると、「汚れや破損が起こりうる」「誤字脱字で読めない」といったケースもあります。さらに、チェック結果をテレビ電話や電話で報告する手順などが発生するため手間が増えてしまいます。時間と労力を削減するためにも、データで管理するのがおすすめです。また、すべての事業所で適切にチェックが実施されているか、運行状況とともに一元管理できるシステムであれば非常にスムーズです。特に、管理者の目視確認が行われない直行直帰の場合には、クラウド型管理サービスを活用することをおすすめします。



4章 アナログからデジタルへ。「クラウド型管理サービス」をおすすめ



◆アルコール検知器一体型サービス

アルコール検知器の中には、スマートフォンから検査結果を自動で管理者に送る機能がついたものもあります。また、なりすましや虚偽の報告を防ぐための機能がついたものもあり、かなり信頼性は高いものがあります。



◆検査結果をスマートフォンアプリで登録管理するタイプ

所有のアルコール検知器の検査結果をスマートフォンアプリで取得してクラウド管理するサービスがあります。直接結果を数字入力するものに加え、スマートフォンのカメラで撮影しOCR機能で自動読取するタイプもあります。特に、OCR機能が付いたものは、直行直帰・出張時のエビデンスとしても残すことができ、費用対効果もあがります。



◆アルコールチェック業務をアウトソーシングする

24時間365日、早朝・深夜のみ、土日祝日のみなど、自社の状況に応じてコールセンター窓口を開設したり、記録や管理にかかる業務において安全運転管理者の負担を削減するために、アウトソーシングを活用するのも検討の一つです。アウトソーシングする場合、検査結果の共有はクラウド管理で行えると、運転者も委託先も効率的に点呼を行うことができます。千葉県警からも以下のようなコメントもでており、今後アウトソーシングすることも増えてくると思われます。

安全運転管理者の不在時など安全運転管理者による確認が困難である場合には、安全運転管理者が、副安全運転管理者又は安全運転管理者の業務を補助する者(以下「補助者」といいます。)に、酒気帯びの有無の確認を行わせることは差し支えありません。

運転者に対する酒気帯びの有無の確認は、業務委託であっても差し支えありませんが、例えば、運転者が酒気を帯びていることを補助者が確認した場合には、安全運転管理者へ速やかに報告し、必要な対応等について指示を受けるか、安全運転管理者自らが運転者に対して運転中止の指示を行うとするなど、安全運転を確保するために必要な対応が確実にとられることが必要となります。

※ 以下、「安全運転管理者等」と記載がある場合は、「安全運転管理者、副安全運転管理者及び安全運転管理者の業務を補助する者」を指します。

出典:千葉県警察本部交通部交通総務課「安全運転管理者の業務拡充に関するQ&A」
https://www.police.pref.chiba.jp/content/common/000055408.pdf>最終アクセス2024年4月19日



5章 まとめ

直行直帰・出張が多い職場では、運転者に簡易型のアルコール検知器を持たせ、アルコールチェックすることが必要不可欠です。記録簿による記録などアルコールチェックの実態を、日々会社が細部まで確認することは困難です。だからといって、記録簿をただ1年間保存するだけでは、形骸化する危険性があります。実際に事故が発生してしまうと「記録簿」「運転日誌」等が厳しくチェックされ、会社の監督責任を問う根拠とされます。

面倒で業務負担が増える記録簿管理、すぐに始められる「紙記録」から「クラウドへの管理」への検討に加え、チェック体制などをしっかり見直すことをおすすめします。

飲酒事故が発生してしまった場合、“「形だけ整えておけばよい」という実態だった”と認定されると、厳しく責任追及されることになります。アルコールチェックを適正に運用するためには、会社が適切な頻度で、チェックの実態を抜き打ち検査することが必須です。事故が発生したときは、飲酒運転の有無に限らず、運転日誌、記録簿の提出を求められることもあります。しっかりとしたデータ管理することで、飲酒運転撲滅に関する業務を削減することも可能です。

弊社でも飲酒運転撲滅に向けてアルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』を提供しております。さまざまなアルコール検知器に対応してアルコールチェック実施管理ができるサービスです。直行直帰・出張時の対応に加え、運転の利用頻度が少ない方向けのプランも用意しておりますのでご検討ください。

飲酒運転撲滅の一躍になれればと願っております。



関連コラム