2024年問題とは?物流・運送業界への影響や取り組むべき対策をわかりやすく解説

2024年問題は、物流・運送業界や荷主企業、消費者それぞれに大きな影響をもたらす問題です。本記事では2024年問題とは何か、働き方改革関連法により何が変わるのか、わかりやすく解説します。トラック事業者・荷主企業・消費者にもたらす影響や、取り組むべき対応策まで網羅しているので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 2024/08/30 公開

目次

  1. 2024年問題とは?
  2. 2024年問題により全国で約「35%」の荷物が運べなくなる
  3. 働き方改革関連法により2024年4月から変わった点
  4. 2024年問題がトラック事業者にもたらす影響
  5. 2024年問題が荷主企業にもたらす影響
  6. 2024年問題が消費者にもたらす影響
  7. トラック事業者と荷主企業が取り組むべき2024年問題への対応策
  8. 2024年問題に関するよくある質問
  9. 2024年問題にはデジタルツールなどの導入で業務効率化を図ろう


2024年問題とは?

2024年問題とは、2024年4月から適用される働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年960時間と制限されることで生じる問題の総称です。

働き方改革関連法により改善基準告示が見直され、時間外労働の上限に加え拘束時間や休息期間などにも新しい基準が設定されます。

これらの見直しにより物流・運送業界が直面する課題や影響として、労働時間の減少に伴い輸送能力が不足し、今までのように荷物が運べなくなる可能性が懸念されています。

物流・運送業界だけでなく荷主企業や消費者にも影響を及ぼすため、事業所の責任者等は2024年問題への迅速な対応が必要となるでしょう。



2024年問題により全国で約「35%」の荷物が運べなくなる

物流業界は、ドライバーの賃金がほかの産業と比べて低く、労働時間も長い傾向にあり、人材不足が深刻化している状況です。公益社団法人 全日本トラック協会によると、貨物自動車のドライバーは他の職種と比べて2倍ほど人手が足りていないとされています。

2024年4月からの働き方改革関連法により、ドライバーの労働時間が短縮されることで、これまでのように荷物が運べなくなり、さらに物流が停滞する恐れがあります。

また、2024年問題の対策を講じない場合に試算される輸送力の不足の割合は、2024年度では約14%、2030年度では約35%です。とくに、東北地方ではドライバーの人手不足が顕著となり、約41%の荷物が運べなくなるといわれています。



働き方改革関連法により2024年4月から変わった点

働き方改革関連法により変わった点がいくつかあります。以下、2024年4月1日から適用された時間外労働の上限規制と改正改善基準告示について紹介します。

  改正前 改正後
時間外労働の上限 上限なし 年960時間
拘束時間の上限 1年:3516時間
1カ月:293時間(最大320時間)
1日:13時間(最大16時間)
1年:3300時間
1カ月:284時間(最大310時間)
1日:13時間(最大15時間)
休息期間 継続8時間以上 継続11時間以上が基本
連続運転時間 4時間を超えないこと 4時間を超えないこと

◾️ 時間外労働の上限

働き方改革関連法は2019年4月から全産業を対象に適用されましたが、これが自動車運転業務に適用されるまで5年間の猶予期間が与えられていました。

2024年4月からは、ドライバーの時間外労働が年960時間の上限となる規制が適用されます。1カ月の時間外労働の目安は平均80時間となりますが、いまのところ1カ月の上限は設けられていません。

将来的には、ドライバーも一般労働者と同様に、時間外労働の上限が年720時間となることを目指しています。


◾️ 拘束時間の上限

拘束時間とは、実労働時間(所定労働時間+時間外)と休憩時間、そのほか使用者に拘束されている時間をいいます。

自動車運転業務を行うドライバーの拘束時間の上限は、次のとおりです。

1年の
拘束時間
3300時間
1カ月の
拘束時間
284時間
1日の
拘束時間
13時間
(上限15時間、14時間超えは週2回までが目安)

例外として、労使協定の締結により、1年の拘束時間の上限が3400時間、1カ月の拘束時間の上限が310時間(年6カ月まで)まで延長することが可能です。

ただし、拘束時間の延長には次の内容を満たす必要があります。

  • 284時間超えは連続3カ月まで
  • 1カ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める

1日の拘束時間の例外として、宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合は16時間まで延長することは可能で、目安としては週2回までです。


◾️ 休息期間

休息期間とは、業務終了時刻から次の始業時刻までの「使用者の拘束を受けない」期間のことを指します。これまでの休息期間は、継続8時間以上とされていました。

2024年4月からは継続11時間以上となるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないよう注意しなければなりません。

また、宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合、継続8時間以上の休息でも許可されますが、これは週2回までとする必要があります。さらに、休息期間が9時間を下回る場合、運行終了後に継続12時間以上の休息期間が必要です。


◾️ 連続運転時間

連続運転時間とは、ドライバーが10分以上の運転を中断することがなく、一度に運転し続けることが許される最大時間を指します。連続運転時間については、改正前と変わらず4時間以内となっています。

ただし、SAやPAなどに駐停車できない状況でやむを得ない場合、30分間まで延長することが可能です。



2024年問題がトラック事業者にもたらす影響

2024年問題がトラック事業者にもたらす影響は、大きく分けて3つあります。ここでは具体的な影響を解説するため、どのような対策が必要になってくるか確認していきましょう。


売上・利益の減少につながる

ドライバーの労働時間が制限されることにより、従来の業務量をこなすことが難しくなったり、今までどおりの長距離輸送ができなくなったりします。その結果、受注量を減らさざるを得なくなり、売上・利益の減少につながる可能性があります。

また、労働時間を短縮するために追加の人員を雇う必要が生じた場合も、人件費がかかってくるため、利益率の低下は避けられないでしょう。

これらの影響を最小限に抑え、これまでと変わらない積載量を請け負うためには、効率的な運営体制の構築が不可欠といえます。



ドライバーの収入減少につながる

2024年問題により、ドライバーの収入減少も避けられない問題となってきます。

2024年4月からの働き方改革関連法の適用により、時間外労働の上限が設けられました。それに伴い改善基準告示も改正され、拘束時間の短縮や休息期間の確保が義務付けられたため、ドライバーの労働時間が短縮されることになります。

労働時間に制限がかかることにより、長時間労働によって収入を得ていたドライバーは、収入が減少する可能性が高いでしょう。とくに長距離輸送は時間外労働に依存していたため、大きな影響があると考えられます。



ドライバーの人手確保が難しくなる

ドライバーの時間外労働や拘束時間の制限が厳しくなることで、従来の労働環境では対応しきれない場面が増えることが予想されます。

トラック事業者のドライバー不足は、年々深刻化しています。とくに規模の小さい企業のトラック事業者は、2024問題によりさらにドライバーの確保が難しくなるでしょう。

新規採用が難しくなることで現役ドライバーの負担は増加するため、離職率が高まるリスクも考えられます。ドライバーの人手不足により、物流の滞りや配送遅延が生じ、消費者への影響も避けられなくなります。



2024年問題が荷主企業にもたらす影響

2024年問題はトラック事業者にいくつかの重大な影響をもたらすことが分かりました。2024年問題はトラック事業者だけでなく、荷主企業にも影響を与えることが予想されています。ここでは、荷主企業が受ける影響について2つ紹介します。


物流コストが増える

2024年問題が荷主企業にもたらす影響の1つは、物流コスト増加による荷主の支出の増加です。

ドライバーの時間外労働や休息期間に厳しい制限がかかるため、効率的な運行が難しくなり、追加のドライバーや車両が必要となります。その結果、トラック事業者の人件費や車両維持費が増加するため、運賃に転嫁せざるを得ません。

また、輸送スケジュールの見直しや輸送ルートの最適化が求められるため、管理コストの増加にもつながります。さらに、これまで提供していた送料無料のサービスが継続できなくなる可能性もあるでしょう。


輸送にかかる日数が増える

ドライバーの労働時間や休息期間の厳格な管理が求められるため、従来よりも長時間の運転が難しくなります。そのため、これまで通りの輸送を依頼できず、輸送にかかる日数が増えてしまうでしょう。

たとえば、1日で配送可能だった輸送が、法改正後は2日以上かかるケースが出てくるほか、急な輸送依頼に対応してもらえない可能性も出てきます。

これらの問題に対処するためには、輸送ルートの最適化や中継拠点の設置などの戦略を検討する必要があります。



2024年問題が消費者にもたらす影響

2024年問題がもたらす影響は、物流業界だけでなく、消費者にも大きな影響をもたらします。とくに、影響が大きく見られるのは、日常生活における配送サービスの質やコストなどです。

たとえば、ドライバーの稼働時間減少の影響により、当日・翌日配達サービスが受けられなくなるほか、新鮮な水産物や青果物などが手に入りにくくなる可能性があります。

そのほか、物流コストの増加による商品の価格上昇など、さまざまな影響が考えられます。



トラック事業者と荷主企業が取り組むべき2024年問題への対応策

企業の経営を守るため、また消費者への影響を最小限に抑えるため、トラック事業者や荷主は、2024年問題の対策に取り組む必要があります。では、どのような対策により2024年問題を乗り越えられるのでしょうか。以下で具体的な対策を解説します。


ドライバーの人手不足への対応

トラック事業所は、第一にドライバーの人手不足を解消する対策を講じることが重要です。ドライバーの収入減に伴い人材確保が難しくなるなか、ドライバー不足への対応はトラック事業者の大きな課題となります。

年々ドライバーの希望者数が減っており、人手不足は深刻化しています。2024年1月の運送業の有効求人倍数も「3.39倍」と、他の産業と比べて高くなっています。

この状況を打破するため、求職者にとって働きやすく魅力的な職場環境を作る対策が必要です。具体的には、給与体系を見直したり、ドライバーの負担削減のために業務効率化のためのシステムを導入したりすることが挙げられます。

そのほかにも、福利厚生を充実させたり、女性や高齢者の雇用を受け入れる体制を整えたりするのも効果的と考えられます。


待機時間の削減

輸送業務における待機時間を削減することも、2024年問題に対応するための課題となってきます。

国土交通省が発表している「トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)」によると、1運行当たりの待機時間は平均1時間34分で、荷待ち1回あたりの平均時間は1時間13分でした。このことから、待機時間によりドライバーの拘束時間が増えていることが分かります。

ドライバーの荷待ち時間が長くなるのは、身体疲労も増やしてしまうためため、業務効率の低下にもつながります。

待機時間が長くなっている主な原因としては、荷主側の出荷体制が整っていないことや出荷の受付時間が集中してしまうことが挙げられます。対応策として、スケジューリングの改善や、円滑に出荷を進めるためのITシステムの導入などが必要です。


システム・ツールの導入による業務効率化

2024年問題に対応するには、システムやデジタルツールの導入が不可欠です。

たとえば、運行管理システムを導入することで、輸送スケジュールの最適化やリアルタイムでの位置情報の把握などが可能となります。的確な運行支持を出せるようになり、荷待ち時間や待機時間の削減につながるでしょう。

また、労働管理ツールを活用することでドライバーの時間外労働を管理できるため、上限を守るための対策が容易になると考えられます。

さらに、運行前の点呼で行うアルコールチェックもデジタルツールを活用すれば、測定結果の記録・保存・管理の手間を軽減することが可能です。ドライバーだけでなく安全運転管理者の負担も減らすことで、社内全体でリソースを確保しやすくなるでしょう。

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2024年問題に関するよくある質問

  • Q. 2024年問題とは簡単にいうと何?
    A. 2024年問題とは、働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年960時間と制限されることで生じる問題の総称です。
    物流・運送業界が直面する影響として、労働時間の減少に伴い輸送能力が不足し、荷物を従来通りに運べなくなる可能性が懸念されています。
  • Q. 2024年問題はいつから始まる?
    A. 2024年問題の要因となる働き方改革関連法の適用開始は、2024年4月1日から始まります。
    全産業を対象とした働き方改革関連法は、2019年4月1日から適応が開始されていました。しかし、自動車運転業務については、時間外労働の上限を導入するまで5年間の猶予期間が与えられた経緯があります。
  • Q. .2024年問題により物流業界の従業員の給料は減る?
    A. 2024年問題により、従業員の給料が減る可能性も考えられます。ドライバーの労働時間が制限されることにより、従来の業務量をこなすのが難しくなるうえ、今までのような長距離輸送ができなくなります。
    受注量を減らさざるを得なくなった結果、従業員の給料に当てるための売上が減少してしまうでしょう。
  • Q. 2024年問題のメリットとデメリットは?
    A. 2024年問題によるドライバーのメリットとして、労働時間が減ることによりワークライフバランスを整えやすくなることが挙げられます。一方デメリットとしては、事業者やドライバーの収入が減少するほか、事業者の離職率が上がることが考えられます。
    このほか、荷主企業には「物流コストの増加」、消費者には「配送サービスの質の低下」など、さまざまな対象にあらゆる影響が出るでしょう。


2024年問題にはデジタルツールなどの導入で業務効率化を図ろう

2024年問題は、ドライバー・荷主企業・消費者それぞれに大きな影響をもたらすことが予想されています。2024年問題に対応するには、ドライバーの人手不足への対応や待機時間の削減、システム・ツールの導入による業務を効率化する対策が必要です。

たとえば、運行管理システムの導入や労働管理ツールを活用することで、荷待ち時間や待機時間の削減、ドライバーの時間外労働を管理できます。

さらに、運行前の点呼で行うアルコールチェックもデジタルツールを活用すれば、測定結果の記録・保存・管理の手間が軽減することが可能です。

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監修者 宇徳 浩二(うとく こうじ)

2002年シャープ入社。携帯電話のソフトウエア開発部門にて、スマートフォンのシステム開発等従事。
その後、AIソリューションの開発責任者として、シャープのAIoT(AI+IoT)のAI開発をけん引。
2022年AIoTクラウドにてプロダクトマネージャーに就任し、アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』、WIZIoT(ウィジオ)遠隔監視サービスなどのSaaSサービスのプロダクトを創出。
AI、IoTを活用したソリューションやサービスに携わる者として、社内外の講演、セミナーに登壇をするなどAI、IoT、SaaSビジネスに関して発信している。

宇徳 浩二