【2024年】アルコールチェック義務化とは?いつから?対象者や罰則も解説

業務で自動車を利用する場合、ドライバーを対象にアルコールチェックを実施することが法律により義務化されています。本記事では、アルコールチェック義務化の概要や対象者、罰則などを解説します。2023年12月に施行された内容も含め網羅的に解説するので、とくにアルコールチェックの対象事業所の総務・管理者様はぜひ参考にしてみてください。

  • 2022/09/15 公開
  • 2024/07/29 更新

目次

  1. アルコールチェック義務化とは?
  2. アルコールチェック義務化の背景
  3. アルコールチェック義務化の対象事業所
  4. 酒気帯び運転・酒酔い運転のアルコール濃度の基準と罰則
  5. 罰則の基準以下でもアルコール反応が出た場合は?
  6. アルコールチェック導入準備の3ステップ
  7. アルコールチェックを実施する際のポイント
  8. アルコールチェックを怠った場合の罰則
  9. アルコールチェック義務化に関するよくある質問
  10. アルコールチェック義務化に伴い管理体制を確立しましょう


アルコールチェック義務化とは?

アルコールチェック義務化とは、安全運転管理者がドライバーの運転前後に酒気帯びていないかを確認するアルコールチェックが、法令で義務化されたことを指します。

緑ナンバー車両のドライバーについては2011年からアルコールチェックが義務化されていましたが、2022年4月1日白ナンバー車両のドライバーに対するアルコールチェックの義務化されました。

また、2023年12月1日の道路交通法改正によりアルコールチェック検知器の使用義務化が追加されるなど、飲酒運転を根絶させるための取り組みが強化されています。

【白ナンバーと緑ナンバーの違い】

白ナンバー ・自家用自動車に対して交付されるナンバープレート
緑ナンバー ・事業用自動車に対して交付されるナンバープレート


2022年4月1日施行の内容

アルコールチェックの義務化は最初2022年4月1日に施行されました。当初の内容は次の通りです。

  • 安全運転管理者は、運転前後の運転者の状態を目視などで確認し、運転者の酒気帯びの有無を確認しなければならない(旧:道路交通法施行規則第9条の10第6号)
  • 酒気帯びの有無を記録し、記録を1年間保存する(旧:道路交通法施行規則第9条の10第7号)

出典:警視庁|安全運転管理者の業務の拡充等

事業所には、安全運転管理者によるアルコールチェックを行うだけでなく、結果を記録しその記録を1年間保存する義務が課されました。この時点ではアルコールチェックは安全運転管理者が目視等で行うことになっており、アルコール検知器の利用は規定されていません。



2023年12月1日施行の内容

2023年12月1日に改正された道路交通法施行規則が施行され、アルコールチェック義務化がさらに厳格化されました。その内容は次の通りです。

  • 安全運転管理者による目視等からアルコール検知器によるチェックに(道路交通法施行規則第9条の10第6号)
  • アルコール検知器を常時有効に保持すること(道路交通法施行規則第9条の10第6号)

出典:警視庁|道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)

目視等による確認だけでなく、アルコール検知器を使ったアルコールチェックが義務付けられたのが大きな違いです。また、アルコール検知器を定期的に点検・メンテナンスして、常時有効に保持することも必要となりました。

なお「常時有効に保持」とは、故障していない正常に作動するアルコール検知器を用意することを意味し、故障した場合には適切な対応が必要です。そして、目視等による確認と同様に、アルコール検知器によるチェックの結果も記録して1年間保存しなければなりません。

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アルコールチェック義務化の背景

このようなアルコールチェック義務化は、2021年6月28日に千葉県八街市で発生した交通事故が背景にあります。トラックが下校途中の児童の列に突っ込み、5人が巻き込まれ、児童2名が死亡、1人が意識不明の渋滞、2人が重症を負うという痛ましい事故が起こりました。

この事故は、トラックを運転していた加害者の飲酒運転が原因で発生したと明らかになり、社会に広く報道されました。トラックが白ナンバー車両であったことから、この事故をきっかけに、白ナンバー車両を一定台数以上使う事業者に対してもアルコールチェックが義務付けられたという背景があります。



アルコールチェック義務化の対象事業所

アルコールチェックが義務化の対象となるのは、安全運転管理者を選任する必要がある事業所です。道路交通法第74条の3第1項は、内閣府令で定める台数以上の自動車を使用する本拠ごとに、安全運転管理者を選任しなければならないとしています。

自動車の台数の基準は、道路交通法施行規則第9条の8で次のように定めています。

  • 乗車定員が11人以上の自動車 1台以上を使用する事業所
  • その他の自動車 5台以上を使用する事業所

※大型自動二輪車又は普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算

出典:警視庁|安全運転管理者制度の概要

自動車は社有車やレンタカー、マイカーにかかわらず、業務に使用する車両が該当します。なお、選任される安全運転管理者は業種を問われません。



酒気帯び運転・酒酔い運転のアルコール濃度の基準と罰則

違反種別 呼気1リットル中のアルコール濃度 違反点数 罰則
酒気帯び運転 0.15mg以上0.25mg未満 13点 ・最低90日間の免許停止
・3年以下の懲役または50万円以下の罰金
0.25mg以上 25点 ・免許取り消し処分と最低2年間の欠格事由となる
・3年以下の懲役または50万円以下の罰金
酒酔い運転 35点 ・免許取り消し処分と最低3年間の欠格事由となる
・5年以下の懲役または100万円以下の罰金

アルコールを接種して運転をしたドライバーに科される罰則には酒気帯び運転と酒酔い運転があります。酒気帯び運転については呼気1リットル中のアルコール濃度に基づいて設定されており、酒酔い運転はドライバーの状態によって判断されます。



酒気帯び運転(アルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満)

呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上となると酒気帯び運転となります。酒気帯び運転のうち、呼気の1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上0.25mg未満である場合には、行政処分として違反点数13点および最低免停90日の免停と、刑事罰として3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定されています。

飲酒検問で警察官がアルコール検知器を使って呼気のアルコール濃度を測定し、反応が出た場合に罰則を受けます。



酒気帯び運転(アルコール濃度0.25mg以上)

酒気帯び運転で、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上になると、刑罰が一層厳しくなります。この場合、行政処分として25点が加算され免許を取り消されます。あらたに免許を取得する場合でも2年間は欠格期間として免許の取得ができません。

また、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.25mg以上の場合も、刑事罰として3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定されています。



酒酔い運転

アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転することを酒酔い運転といいます。

  • 白線の上を真っすぐに歩けるか
  • 質疑応答して呂律に異常が無いか
  • 視覚や視点から認知能力が機能している状態か

以上の基準から総合的に判断して正常な運転ができない場合には酒酔い運転となります。行政処分として35点が加算され免許を取り消されます。あらたに免許を取得する場合でも3年間は欠格期間として免許の取得ができません。

また、刑事罰として5年以下の懲役又は100万円以下が規定されています。



罰則の基準以下でもアルコール反応が出た場合は?

アルコールチェックで従業員から酒気帯び運転・酒酔い運転の対象となる基準が出た場合、当然ですが運転させてはいけません。では、アルコールチェックによって罰則の基準以下の反応が出たときにはどのような対応が必要なのでしょうか。



お酒を飲んでいれば酒気帯びのレベルに達しなくても運転させない

もし、アルコール濃度が酒気帯びのレベルに達していなくても、多少でもお酒を飲んでいる場合はそのドライバーを自動車に載せるべきではありません。

上述したように、酒気帯び運転となるのは呼気1リットル中に0.15mg以上のアルコールが検知された場合です。つまり、アルコールチェックで1リットルあたり015mg未満であったとしても、そのドライバーは乗車させないという対応をとる必要があります。



お酒を飲んでいないにもかかわらず呼気にアルコール反応が出た時の対応

本人がお酒を飲んでいないにもかかわらず、呼気にアルコールが出ることがあります。この原因には次のような例が挙げられます。

  • アルコール検知器が反応しやすいものを食べた、飲んだ(例:キムチなどの漬物・味噌などの発酵食品、エナジードリンク、栄養ドリンクなど)
  • 喫煙
  • 歯磨き粉・マウスウオッシュなど
  • 糖質制限しているときに呼気に出やすいケトン体
  • 前日にアルコールを飲んでいて分解しきっていない

安全運転に支障はありませんが、アルコール検知器が反応している状態では運転させられないため、反応を無くすための適切な対応が必要です。対応としては次の2つが挙げられます。

  • うがいをして30分ほど時間を置く
  • アルコール検知器の清掃を行う

アルコールを摂取していないのに反応が出た場合、口の中にアルコールが反応しやすいものが残っている可能性があるため、まずはうがいをしてみましょう。うがいをして30分ほど時間を置けば、口の中に残っていたものが無くなりアルコール反応が消えることがあります。

また、使用しているアルコール検知器のセンサーにアルコールの匂いがついてしまっていて、これに反応しているケースもあります。アルコール検知器の清掃を行うと効果が見られるかもしれません。



アルコールチェック導入準備の3ステップ





アルコールチェックを導入するために必要な準備にはどのようなものがあるでしょうか。
3つのステップを紹介します。



安全運転管理者・副安全運転管理者の選任

アルコールチェックを導入するには、まず安全運転管理者の選任を行います。

【安全運転管理者の資格要件】

  • 20歳以上
  • 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有する者

【副安全運転管理者の資格要件】

  • 20歳以上
  • 自動車の運転の管理に関し1年以上の実務の経験を有する者

安全運転管理者になるには、20歳以上かつ自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有しており、道路交通法施行規則第9条の9第2項に規定する欠格事由(※)がないことが要件です。

※過去2年以内に都道府県公安委員会による安全運転管理者等の解任命令を受けた、酒酔い・酒気帯び運転を行ってから2年が経過していない等

なお、台数が20台以上40台未満の場合は、副安全運転管理者を1人、40台以上の場合は20台ごとに副安全運転管理者1人の選任が必要です。副安全運転管理者の場合、自動車の運転の管理に関する実務経験は1年以上が基準となります。

安全運転管理者になるための資格要件は?
欠落事項なども詳しく解説

安全運転管理者が不在のときの対応

深夜・早朝などで安全運転管理者が不在のときは、副安全運転管理者もしくは安全運転管理者の補助者によるアルコールチェックをすることも認められています。副安全運転管理者や安全運転管理者の補助者を選任しておき、常に対応可能な状態にしておく必要があります。



アルコール検知器の用意

アルコール検知器の用意も事業所の義務です。国家公安委員会の定めるアルコール検知器を用意する必要があります。

国家公安委員会の定めるアルコール検知器とは「呼気中のアルコールの有無や濃度を警告音・警告灯・数値などで示す機能を有する機器」です。正確性があるか・使いやすいかといった観点からアルコール検知器は選ぶのがよいでしょう。

また、使用方法やメンテナンス方法についてもよく確認し、必要なときに正しく操作できるようにしておくことが重要です。

アルコール検知器の種類や選び方
について詳しくはこちら



アルコールチェックの記録・保管体制の整備

アルコールチェックを記録し、保管する体制を整備しましょう。アルコールチェックの結果は、上述したように1年間保管する必要があります。

そのため、アルコールチェックの結果を正確に記録することはもちろん、適切に保管する体制を整える必要があります。データの改ざんや記入漏れを防ぐための、精度やセキュリティの高い管理方法を選択するのが重要です。

きちんと記録を行い保管するための方法として、最近はクラウド型での保管が推奨されています。

アルコールチェックの記録簿に必要な項目は?
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『スリーゼロ』とは、市販のアルコール検知器で酒気帯びの有無をチェックし、スマホアプリ経由で検査記録をクラウド上に一元管理できるサービスです。データの漏れや改ざんなどのリスクを防ぎつつ、楽に管理できるのが魅力といえます。

なお、運転手が直行直帰する体制などイレギュラーな体制にも柔軟に対応可能です。アルコールチェックに関する業務の負担を減らしたい事業所は、ぜひ『スリーゼロ』をご検討ください。

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アルコールチェックを実施する際のポイント

アルコールチェックを実施する際のポイントにはどのようなものがあるでしょうか。主なポイントとして次の2点があります。



実施するタイミングは運転業務の開始前・終了後

アルコールチェックは、運転業務の開始前・終了後の2回実施しなければなりません。実施するタイミングについて、警視庁は以下のように述べています。

酒気帯びの有無の確認は、必ずしも個々の運転の直前又は直後にその都度行わなければならないものではなく、運転を含む業務の開始前や出勤時及び終了後や退勤時に行うことで足ります。

出典:警視庁|道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)

以上のように、必ずしも運転の直前又は直後に行わなければならないものではなく、運転業務の開始前・終了後であればどのタイミングにチェックしたとしても認められます。



原則として対面で確認

アルコールチェックは基本的には対面で目視等やアルコール検知器を使用して行います。
運転者の状態を直接観察することで、運転者の顔色や言動、体の動きなど視覚的な情報を得られるためです。

また、アルコール検知器を用いることで呼気に含まれるアルコール濃度を調べることができます。アルコール検知器協議会に認定されているアルコール検知器が推奨されます。


【目視等で確認するときのポイント】

  • 顔色は正常か
  • 呼気が酒臭くないか
  • 応答時の声の調子はどうか

【アルコール検知器を使用するときのポイント】

  • 国家公安委員会の定めるアルコール検知器か
  • 利用しやすいか
  • アルコール検知器協議会に認定されているか

また、直行直帰など対面でアルコールチェックをできない場合は、例外として「対面に準じた方法」が認められています。たとえば、スマホの通話やカメラでドライバーの声・顔色などを確認する方法です。

直行直帰のときのアルコールチェックのやり方については、以下の記事で詳しく解説しているためぜひ参考にしてみてください。

直行直帰のときの
アルコールチェックのやり方
について詳しくはこちら



アルコールチェックを怠った場合の罰則

アルコールチェックを怠った場合には罰則はあるのでしょうか。アルコールチェックは安全運転管理者の義務ですが、この義務に違反したとしても現段階では刑罰となる旨は定められていません。

しかし、アルコールチェックを怠ることで安全運転管理者等の解任される可能性があります。この解任に従わなかった場合には、刑事罰が規定されているので注意しましょう。

アルコールチェックを怠り運転手が事故を起こしたことで、過失運転に関する刑事罰について会社が家宅捜索を受けた事例もあります。社会的損失を受けないためにも、対象事業所は必ずアルコールチェックを実施するようにしましょう。

アルコールチェック・点呼等の不手際が、社会問題として大きく取り上げられた事例

アルコールチェック義務化に関するよくある質問

  • Q. お酒を飲まない人もアルコールチェック義務化の対象になる?
    A.お酒を飲まない人でもアルコールチェックの義務化の対象となります。アルコールチェックの対象となるのは、事業所の業務として運転する全ての者であるため、お酒を飲むかどうかは問われません。
  • Q.レンタカーを使用する場合でもアルコールチェックは必要?
    A.仕事でレンタカーを使用するときもアルコールチェックは必要です。レンタル・リースなどで自動車を長期間借りる場合、事業所の車両とみなされるためアルコールチェックを実施しなければいけません。
    一方で、突発的にレンタカーを借りる場合、事業所が管理しているとはいえないのでアルコールチェックは不要です。

直行直帰のときの
レンタカーでもアルコールチェックは必要?
詳しい解説はこちら



アルコールチェック義務化に伴い管理体制を確立しましょう

飲酒運転による痛ましい死亡事故をきっかけに始まったアルコールチェック義務化は、2023年12月1日にさらに厳格化されました。

現在はアルコールチェックに対応できていなくても罰則は受けません。しかし、今後もさらに道路交通法改正が重ねられた結果、未対応のままでは処分が科される可能性もあります。アルコールチェックの管理体制が整っていない事業所は、なるべく早い段階で導入を検討するのがよいでしょう。

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監修者 宇徳 浩二(うとく こうじ)

2002年シャープ入社。携帯電話のソフトウエア開発部門にて、スマートフォンのシステム開発等従事。
その後、AIソリューションの開発責任者として、シャープのAIoT(AI+IoT)のAI開発をけん引。
2022年AIoTクラウドにてプロダクトマネージャーに就任し、アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』、WIZIoT(ウィジオ)遠隔監視サービスなどのSaaSサービスのプロダクトを創出。
AI、IoTを活用したソリューションやサービスに携わる者として、社内外の講演、セミナーに登壇をするなどAI、IoT、SaaSビジネスに関して発信している。

宇徳 浩二