「運行管理者試験について1から10 まで知りたい」という企業の担当者は必見です。本記事では、運行管理者試験の受験資格や試験の内容、難易度など試験の概要について網羅的に解説していきます。過去問や勉強のコツ、合格発表後の流れなども紹介するので、ぜひ受験の参考としてお役立てください。
- 2024/09/18 公開
目次
運行管理者試験とは
運行管理者試験とは、緑ナンバー(※)を有する運送事業者が事業所に配置しなければならない「運行管理者」を認定するための試験です。この試験は3月と8月の年2回実施されます。
試験では、人や物を運ぶ際の法律や業務に関する知識・技能について問われます。合格することで運行管理者の国家資格を得ることが可能です。
なお、試験の実施、管理は国土交通大臣の指定試験機関である公益財団法人運行管理者試験センターが行っています。
※緑ナンバー:有償で人や貨物を運ぶ自動車に取り付けられている緑地に白文字のナンバープレート
◾️ 運行管理者の役割と重要性
運行管理者は運送事業所において安全かつ効率的な車両運行を管理する担当者です。道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、運行計画の作成や運行中の安全管理、ドライバーの監督・指導などを行います。
運送事業者は事業所の規模に応じた一定数以上の運行管理者を必ず配置しなければなりません。運行管理者の仕事内容は配置人数、配置後の届出に関して、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
◾️ 運行管理者の資格を保有するメリット
資格保有者は、運行管理者としてのキャリアを積むことで運送事業における専門知識や技能を深められ、事業全体の効率化や安全性の向上に貢献できるでしょう。また、一度取得すると更新不要なため、安定して長期的に働ける点もメリットです。
企業は、運行管理者を選任することで運送事業者としての信頼性を確保でき、事業の運営をスムーズに行えます。
運行管理者試験の合格率・難易度
運行管理者試験の最新の合格率は下記のとおりです。
令和5年度第2回 | 貨物 | 旅客 |
---|---|---|
受験人数 | 22,493人 | 5,434人 |
合格者数 | 7,701人 | 1,984人 |
合格率 | 34.2% | 36.5% |
合格率は開催年度によって違いますが、例年30%〜40%程度です。旅客試験より貨物試験のほうがやや合格率は低い傾向にあります。資格試験の難易度としては中程度といえるでしょう。
ただし近年は、運送事業者の重大事故の発生などを背景に、難易度が上がってきています。試験に合格するには、しっかりした事前対策が必要です。
◾️ 運行管理者試験で合格ラインとなる点数
全体の正答が60%以上
かつ、(1)~(4)の分野で最低1問以上の正答、(5)の分野で2問以上の正答
試験は5つの分野から合計30問出題されます。貨物試験の分野は( 1 ) 貨物自動車運送事業法関係・( 2 ) 道路運送車両法関係・( 3 ) 道路交通法関係・( 4 ) 労働基準法関係・( 5 ) その他運行管理者の業務です。
旅客は(1)が道路運送法関係という分野で、他の4分野は貨物と同様です。
合格するには、原則として60%(18問)以上の正答が必要です。さらに、5つの出題分野のうち(1)~(4)の分野で最低1問以上の正答、(5)の分野で2問以上の正答が必要となります。
運行管理者試験の受験資格
- 業務について1年以上の実務経験がある
- 基礎講習を修了している
運行管理者試験を受験するには、上記のいずれかの条件を満たす必要があります。以下で、それぞれ解説します。
◾️ 業務について1年以上の実務経験がある
運行管理者試験を受験するには、試験の前日までの間に、業務について1年以上の実務経験があることが条件です。実務経験とは以下の業務のいずれかを指します。
- ⾃動⾞運送事業(貨物軽⾃動⾞運送事業を除く)の事業⽤⾃動⾞の運行管理
- 特定第⼆種貨物利⽤運送事業者の事業⽤⾃動⾞(※緑⾊のナンバーの⾞)の運行管理
※緑ナンバー:有償で人や貨物を運ぶ自動車に取り付けられている緑地に白文字のナンバープレート
◾️ 基礎講習を修了している
国土交通大臣が認定する講習実施機関において実務経験と同等の講習(基礎講習)を終了していれば、実務経験がなくても試験を受けることができます。試験の2週間前までに講習修了予定であることが必要です。
試験の種類と講習の種類は同一でなければなりません。貨物の試験を受ける人は貨物の講習を、旅客の試験を受ける人は旅客の講習を受ける必要があるため注意しましょう。
運行管理者試験の概要(会場・日程・申し込み方法・手数料)
運転管理者試験は受験する試験会場と日程を選択し、所定の手続きを行って受験料を支払う必要があります。運行管理者試験の概要についてみていきましょう。
◾️ 運行管理者試験の会場
貨物試験、旅客試験ともに、試験会場は各都道府県に最低1会場、ほとんどの都道府県で複数会場設けられています。手数料の支払い手続きの前にインターネットで希望の受験会場を選択可能です。一部の会場では受験者数の定員を設けているため、早めに確認しておきましょう。
「運行管理者試験 ○○県」などと検索すればその県の会場や日程が調べられるため、受験予定の都道府県で検索してみましょう。
◾️ 運行管理者試験の日程
運行管理者試験は年に2回、3月と8月に実施されます。いずれも約1ヶ月、期間が設けられており、受験会場とともに希望の日時を選べます。具体的な日程は毎年変わるため、公益財団法人運行管理者試験センターのHPで最新の情報を確認しましょう。
以下は令和6年の申し込み期間・試験日程です。申し込み期間が過ぎていますが、毎年同じくらいの時期に申し込み期間・試験日が設定されるため、来年度に受験する方も参考として確認しておきましょう。
【令和6年申し込み期間・日程】
試験日 | 令和6年8月3日(土)〜9月1日(日) |
---|---|
申請期間 | 令和6年6月10日(土)〜7月10日(日) |
◾️ 運行管理者試験の申し込み方法
運行管理者試験に申し込む方法は、インターネットでの入力・送信のみです。パソコンまたはスマートフォンと、電子メールアドレスさえあれば簡単に申し込めます。
公益財団法人運行管理者試験センターの専用申し込みフォームにアクセスし必要な情報を入力します。
パソコンで申請する場合はアップロードする必要書類をデータ化しなくてはなりません。スマートフォンだとカメラを使って即座にアップロードし、そのまま申請できるので便利です。
なお、申し込み期間が限られているため余裕を持って申請しましょう。
◾️ 運行管理者試験の受験手数料
- 受験手数料:6,000円
- システム利用料:660円
運行管理者試験の受験手数料は6,000円(非課税・令和6年現在)です。加えてシステム利用料が660円(税込)かかります。希望者は140円(税込)で試験結果レポートの発行が可能です。
支払い方法はクレジットカード決済、コンビニ決済、ペイジー決済から選択できます。受験手数料等の支払い後は、返金や次回試験への繰り越しはできません。
運行管理者試験 | 当日から合格発表までの流れ
運行管理者試験の当日から合格発表までの流れをみていきましょう。受験当日に必要な持ち物もあわせてご紹介します。
◾️ 試験当日のスケジュール
- 受付で書類による本人確認を行う
- 携帯電話、筆記用具、腕時計を含むすべての荷物をロッカーに預ける(本人確認書類はもったまま)
- 待合室で待機
- 試験監督者より着席する席番号が記載された「ID番号票」が配布される
- 試験監督者の案内に従って入室・「ID番号票」に記載の座席に着席
- 試験開始
- 試験終了後「ID番号票」、「シャープペンシル」、「メモ用紙」、「本人確認書類」をもって退出、受付で退出手続き
受付は試験開始時間の30分前から15分前までです。時間内に受付を済ませなければ受験できないため、余裕を持って会場に入りましょう。
筆記用具は持ち込めませんが、座席にシャープペンシルとメモ用紙が用意されています。メモ用紙が足りなくなった場合は、試験監督者に申し出れば追加可能です。
◾️ 受験当日の持ちもの
- 「顔写真付き本人確認書類」の持参が必須
受験当日は、有効期限内の顔写真付き本人確認書類を必ず持参する必要があります。書類は原本のみ、コピーや画像は不可です。
受付で提示できないと、いかなる理由があっても受験できないため注意しましょう。
1点で有効な書類と2点揃わないと有効でない書類があります。
1点で有効な本人確認書類 | 2点で有効な本人確認書類 |
---|---|
|
|
試験を受ける際に必要なものは、上記の本人確認書類のみです。受験確認書メールは必須の持ち物ではありませんが、試験会場・試験日時・注意事項などが記載してあるためスマートフォンで表示・確認できるようにしておくのが安心です。
◾️ 合格発表のタイミングと確認方法
合格発表は試験のおよそ一月後、公益財団法人運行管理者試験センターのHPにて発表されます。受験番号で検索できるほか、一覧でも確認可能です。
後日、試験結果通知書と試験結果レポート(希望者のみ)が後日郵送されてきます。試験結果レポートは受験後に追加申し込みできないため、申請時に必要の有無を判断しましょう。
◾️ 合格後の手続き
合格後は、所定の書類をそろえて運輸支局等で資格者証の交付申請手続きを行う必要があります。申請書類、申請方法等の詳細は「試験結果通知書」に同封されているので必ず確認しましょう。
合格発表日から3ヵ月以内に申請を行わなければ合格は無効です。速やかに手続きを行いましょう。
運行管理者試験に不合格になった場合の流れについては、以下で解説しています。万が一、不合格になった時のために事前に確認しておきましょう。
運行管理者試験の内容
運行管理者試験の内容として、主に運行管理に関する法令や規則についての理解を問われます。
出題形式は大きく分けて2つです。1つは文章の正誤もしくは選択を求められる問題。この形式には、選択肢すべてに対して正誤を問われるパターンと複数ある選択肢のなかから正しい内容の選択肢だけを選ぶパターンがあります。
もうひとつは穴埋め問題です。1つの文章に複数の空欄があり、空欄に当てはまるものが全て正しい選択肢を選ぶ、といったパターンで出題されます。数字が空欄にされていることが多く、正確な暗記力が要求されます。
具体的な出題分野と出題数は以下のとおりです。
【貨物試験】
分野 | 出題数 |
---|---|
( 1 ) 貨物自動車運送事業法関係 | 8 |
( 2 ) 道路運送車両法関係 | 4 |
( 3 ) 道路交通法関係 | 5 |
( 4 ) 労働基準法関係 | 6 |
( 5 ) その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識及び能力 | 7 |
合計 | 30 |
【旅客試験】
分野 | 出題数 |
---|---|
( 1 ) 道路運送法関係 | 8 |
( 2 ) 道路運送車両法関係 | 4 |
( 3 ) 道路交通法関係 | 5 |
( 4 ) 労働基準法関係 | 6 |
( 5 ) その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識及び能力 | 7 |
合計 | 30 |
運行管理者試験の形式「CBT」とは
運行管理者試験は、従来の紙ベースの筆記試験からコンピュータを使用しCBT(Computer Based Testing)形式に全面移行しました。受験はすべてパソコンへの入力で回答します。
事前に指定された試験会場に予約を入れ、当日は会場に設置されたパソコンを使用して試験を受けます。試験問題が画面上に表示されマウスやキーボードを使用して解答を入力します。
試験を受けるにはパソコンの基本的な操作スキルが必要なため、普段あまりパソコンを使用しない方は、試験までに基本的な操作を行えるよう慣れておくことが必要です。
運行管理者試験に合格するための勉強法
仕事をしながら運行管理者試験の勉強を進める場合、効率的に勉強できる方法を知りたい方も多いでしょう。運行管理者試験に合格するための勉強のコツを4つご紹介します。
◾️ 事前に学習スケジュールを立てる
試験勉強を行う際は、試験日から逆算して学習スケジュールを立てることが重要です。試験科目ごとに必要な学習時間を割り出し、試験までの期間でどう組み込んでいけばよいか考えてみましょう。1日単位ではなく週単位での目標設定でも構いません。
スケジュールをたてたら、そのスケジュール通りに進んでいるか定期的に確認しましょう。計画通りに学習を進めることができます。
◾️ 過去問を活用する
運行管理者試験では、過去の試験と似た問題が多く出題される傾向が高めです。過去問で出題傾向を把握し、試験の形式に慣れておくのがおすすめです。
まずは過去数年分の問題を入手し、繰り返し解いて理解を深めましょう。過去問は運行管理者試験センターのHPで閲覧できます。
解答後には必ず解説を確認し、間違えた原因や苦手な科目の分析をしましょう。苦手科目を重点的に学習することで効率的に勉強を進められます。
令和4年・令和3年の試験問題はこちら
◾️ テキストは最新でわかりやすいものを用意する
市販のテキストで勉強する場合は最新版を入手しましょう。関連する法令が改正されていると、古いテキストでは対応できない可能性があります。
また、要点が絞りきれていないテキストや見づらいテキストでは勉強効率が落ちてしまうため、わかりやすくシンプルなテキストを選ぶことが重要です。テキスト選びに迷う方は、人気ランキングや口コミなどをみて決めるのがよいでしょう。
暗記に力を入れたい方はメインのテキストとは別にコンパクトな暗記集を使い、移動中など隙間時間を利用して学習するのもおすすめです。
◾️ オンライン講座を活用する
近年、非常に便利な学習方法として注目されているのがオンライン講座です。自宅にいながら専門講師の授業を受けることができ、時間や場所に縛られずに学習を進められます。
オンライン講座の大きなメリットは、録画された授業を何度でも視聴できるため、理解が不十分な箇所を繰り返し学習できる点です。講座によっては模擬試験や質問対応などのサポートが充実しているため、疑問点もスムーズに解消できるでしょう。
独学だとモチベーションが保ちづらい方は、オンライン講座の受講を検討するのがおすすめです。
運行管理者試験に関するよくある質問
-
Q. 運行管理者試験に不合格になったらどうする?
A. 「再受験申請システム」で再受験が可能です。不合格になった場合は再受験を目指しましょう。再受験申請時は、初回受験時に提出した書類は不要で、顔写真の提出のみで試験を受けられます。
再受験は、定められた年度内に受験し、氏名に変更がない方が対象です。再受験について詳しくは「運行管理者試験 再受験申請システム」を確認しましょう。 -
Q. 運行管理者になるには必ず試験に合格しなければいけない??
A. 必ずしも試験に合格する必要はありません。試験を受けずに運行管理者になる方法もあります。運行管理の実務経験が5年以上あり、かつ実務経験の間に運行管理に関する所定の講習を5回以上受けると運行管理者の要件を満たせます。
ただし、実際には資格を取得していない状態で実務経験を積むのは難しいため、経験が浅い場合は試験を受験したほうが早いといえるでしょう。
運行管理者試験に合格するために万全な準備をしておこう
運行管理者はドライバーと公衆の安全を守る重要な役割であり、取得すると本人にも事業所にも大きなメリットをもたらす国家資格です。
運行管理者試験の合格率や難易度は中程度のレベルですが、合格するにはしっかり対策してのぞむ必要があります。CBT試験のためパソコン操作にも慣れておく必要があるでしょう。
運行管理者の重要な仕事の1つに、乗務前後の点呼があります。近年ではドライバーの飲酒運転による事故が増加しており、点呼時のアルコールチェックは欠かせません。これは、運転管理者のみならず、白ナンバーを管理する安全運転管理者にとっても重要な業務です。
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