安全運転義務違反とは?該当する行為や罰則・違反点数についても解説

自動車や自転車のドライバーには、安全運転義務が課せられています。安全運転義務違反による交通事故は非常に多いため、安全運転義務について改めて認識しておく必要があるでしょう。この記事では、安全運転義務違反とは何か、該当行為や罰則、違反点数などを解説します。

  • 2024/07/29 公開

目次

  1. 安全運転義務とは?
  2. 安全運転義務違反の内容
  3. 安全運転義務違反をした場合の違反点数と罰則
  4. 安全運転義務違反により死亡事故が発生するケースも多い
  5. 安全運転義務違反を防ぐためにドライバーがすべきこと
  6. 安全運転義務違反を防ぐために管理者がすべきこと
  7. 安全運転義務違反に関してよくある質問
  8. 安全運転義務違反は死亡事故につながるもの。しっかり対策しよう


安全運転義務とは?

安全運転義務とは、道路交通法第70条(安全運転の義務)で規定されている、ドライバーの義務です。

ドライバーは、車両の安全走行のためにハンドルやブレーキなどの装置を確実に操作し、的確な状況判断によって、事故を未然に防ぐ運転をしなければなりません。道路交通法第70条(安全運転の義務)に違反した場合、「安全運転義務違反」となります。

安全運転義務を定めた道路交通法第70条は、以下のとおりです。



【道路交通法・第70条】

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

出典:e-Gov法令検索|(安全運転の義務)第七十条

2024年5月の道路交通法改正により自転車の交通違反の取り締まりが強化され、青切符による反則金制度が導入されました。これは、反則金を支払うと刑事処分が免除され、反則金を支払わない場合は刑事処分が行われる制度です。

このように近年、自動車だけでなく自転車の安全運転義務に関しても、注目が集まっています。

「青切符」とは?自転車の交通違反に
ついて詳しく解説



安全運転義務違反の内容

安全運転義務違反は、大きく分けて7つに分類されます。ここからは、安全運転義務違反の内容について確認します。



運転操作不適

運転操作不適とは、ドライバーの運転操作におけるミスを指し、大きく分けて「ブレーキ操作不適」と「ハンドル操作不適」の2種類あります。運転操作不適の例として、以下が挙げられます。

  • アクセルとブレーキの踏み間違い
  • ハンドル操作ミス
  • ギアの入れ間違い
  • 片手運転
  • ウインカーの不使用

近年、高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故も多発しています。



前方不注意

前方不注意は、「漫然運転」と「脇見運転」に分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

  • 漫然運転

    漫然運転とは、考え事をしていたりボーっとしていたりと、集中力や注意力に欠けている状態で、前を向きながらも運転に集中していないことを指します。具体的な例としては、以下のとおりです。

    • 歩行者や車の動きを見落とす
    • 信号や踏切を無視する
    • 速度制限に気が付かずスピード超過する
    • 標識を見落とす

    漫然運転は重大な事故につながりやすく、交通事故における死亡事故の原因になることも多い危険な運転です。

  • 脇見運転

    脇見運転とは、ほかのことに気を取られて、よそ見をした状態で運転する行為です。以下の状態が、例として挙げられます。

    • 外の景色に気を取られる
    • 車内で物を探す
    • 携帯電話を注視したり、操作したりする
    • カーナビを注視する

    2019年12月に、運転中の携帯電話やカーナビの使用は道路交通法第71条(運転者の遵守事項)で禁止行為と定められました。(出典:e-gov法令検索「道路交通法第71条5の5」)

    脇見運転は重大な事故の原因となる行為で、一瞬の不注意で大惨事を起こしてしまう可能性があります。



動静不注視

動静不注視とは、周囲の車や歩行者の存在や動きに気付いていながら、危険ではないと判断してその動静の注視を怠ることです。「だろう運転」とも呼ばれ、「対向車が止まってくれるだろう」「歩行者は渡らないだろう」などとリスクを見逃す行為を指します。

具体例として、以下の行為が挙げられます。

  • 対向車の存在を認識していながら譲ってもらえると判断し、進行する
  • 歩行者の存在を認識していながら渡るとは思わず減速しない

周囲の車や歩行者などの存在を確認した上で、自己判断によって注視することなく運転操作をした結果、事故を引き起こした場合に動静不注視とみなされます。



安全不確認

安全不確認とは、前後左右の安全確認ができる速度に減速しながらも、確認が不十分で車や歩行者などを見落としてしまい事故につながる行為です。安全不確認は以下のような場面で起こりえます。

  • 交差点進入時
  • 車線変更時
  • 高速道路合流時
  • 駐車時

たとえば、交差点を右折する際に対向車に意識が集中し、右側を通行する歩行者の発見が遅れて事故になるケースが挙げられます。ドライバーは日頃から安全確認に対する意識を持ち、確認を徹底することが重要です。



安全速度違反

安全速度違反とは、制限速度や法定速度を守っているものの、状況に応じた安全速度で走行しない行為を指します。通常、以下のような場所や場面では減速や徐行が必要です。

  • 交差点
  • 横断歩道
  • 見通しの悪いところ
  • 大雨や吹雪、霧といった天候不良

安全速度違反は一般的な速度違反とは異なります。制限速度や法定速度内で走行していても、減速や徐行が必要な場面において速度調整を怠るケースが安全速度違反と呼ばれます。



予測不適

予測不適とは、ドライバーの勝手な思い込みにより判断ミスを引き起こす行為です。予測不適には、ドライバーの以下のような思い込みが当てはまります。

  • 相手がよけると思った
  • 渡らずに止まるだろう
  • 十分に車間を取ったつもり
  • それほどスピードが出ていないだろう

このように予測不適では、自分の車両の速度や運転間隔の誤りや、相手の速度や距離間、行動に対する判断ミスが事故につながります。



安全運転義務違反をした場合の違反点数と罰則

安全運転義務違反を起こしたときの違反点数は2点です。これは基礎点数というもので、もし安全運転違反で事故を起こした場合は、基礎点数2点に加えて付加点数が発生します。

付加点数とは、事故を起こしたときに責任の程度や、負傷者の負傷の程度によって加算される点数です。累積違反点数によっては、免許停止や免許取り消しの処分が科されます。

安全運転義務違反の反則金は違反した車両の種類によって異なり、金額は以下のとおりです。

  • 大型車:12,000円
  • 普通自動車:9,000円
  • 二輪車:7,000円
  • 原付:6,000円

反則金を支払うと刑事処分は免除されますが、支払わない場合は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。



安全運転義務違反により死亡事故が発生するケースも多い

交通死亡事故の発生原因において、安全運転義務違反の割合は意外高い傾向にあります。内閣府が公表した令和4年中の第1当事者における法令違反別の交通死亡事故発生件数のデータによると、交通死亡事故2550件中、安全運転義務違反は52.3%(1334件)と半数以上を占めています。

そのうちの安全運転義務違反の内訳は、多い順に並べると以下のとおりです。

  1. 運転操作不適 14.2%(361件)
  2. 漫然運転 13.2%(336件)
  3. 安全不確認 10.1%(257件)
  4. 脇見運転 9.1%(233件)

出典:内閣府「令和4年中の道路交通事故の状況」

以上のデータから、ドライバーの操作ミスや不注意などから起こる安全運転義務違反は、死亡事故につながる大きな原因となることが読み取れます。安全運転義務を守ることは、事故を未然に防ぎ死亡事故を減らすために重要といえます。



安全運転義務違反を防ぐためにドライバーがすべきこと

安全運転義務違反を防ぐために、ドライバーは安全運転義務を守る意識を持ちましょう。運転中は集中力を保ち、周囲の交通状況を把握するように努めることが大切です。スマートフォンやカーナビの操作は、必ず車両を停止させてから行いましょう。

また、集中して運転するために適度な休憩を取る、無理のない範囲で正しい姿勢を維持するのも重要といえます。正しい運転姿勢は以下のとおりです。

  • シートに深く座る
  • 視野を広く持つためにシートは高めに調整する
  • しっかりと踏ん張れるようにシートの前後位置を調整する
  • ハンドルを握ってひじが伸び切らない状態にシートの背もたれの角度を調整する


安全運転義務違反を防ぐために管理者がすべきこと

安全運転義務違反を防ぐために、企業の管理者がすべきことにはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、管理者がすべきことを3つ紹介します。



安全運転教育を実施する

企業は従業員に向けて定期的に安全運転教育を行い、ドライバーの安全運転義務への意識向上を図りましょう。安全運転講習を実施することで、安全運転の基本や重要性を改めて認識させられるため、安全運転義務違反の防止に役立ちます。

安全運転講習には、新入社員向けや事故発生者向け、管理者向けなどさまざまな対象者に向けたものがあるため、対象者によって最適な講習を実施しましょう。

また、安全運転義務への意識向上につながるのがアルコールチェックの厳格化です。令和4年の道路交通法改正により、一定台数以上の社用車を有する企業はアルコールチェッカーを用いてのアルコールチェックを実施することが必要となりました。

アルコールチェック義務化とは?
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ドライブレコーダーを設置する

ドライブレコーダーの設置は、運転の監視と事故防止の両方の役割を考慮すると非常に有効といえます。ドライブレコーダーに記録された映像は、万が一事故が起こってしまったときに事故の原因特定や証拠として活用できます。

また、自身の運転を記録されることによって運転を見直す機会を得られるため、ドライバーの安全意識の向上につながります。企業の管理者はドライブレコーダーから得た映像やデータを使って、適切な指導を行うのがよいでしょう。

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きめ細やかな労務管理を行う

きめ細やかな労務管理は、ドライバーの健康と安全を守るために重要です。定期的な健康診断やメンタルヘルスケアは、ドライバーの心身を良好に保ち安全運転義務違反を防ぐことにつながります。

過労やストレスの蓄積によって起こりうる集中力の低下が、安全運転義務違反につながるケースもあるため、管理者はドライバーの労務管理を適切に行いましょう。



安全運転義務違反に関してよくある質問

  • Q.違反点数が何点になると免許停止処分が科される?
    A. 免許停止処分を受ける違反点数は、前歴の有無によって異なります。前歴がない場合は、違反点数が6点以上14点以下で免許停止処分となります。6~8点の場合は30日間、9~11点の場合は60日間、12~14点の場合は90日間が免許停止期間です。
    前歴がある場合は違反点数が4点以上になると免許停止処分が科され、免許停止期間は前歴の多さによって異なります。なお、前歴が無くとも違反点数が15点以上になると、免許取消となるので注意しましょう。
  • Q.安全運転義務違反は自転車のドライバーも対象となる?
    A. 安全運転義務違反はすべての車両に適用されるものであり、自転車も対象となります。
    近年、自転車による事故が増加しており、自転車の交通安全に関する取り締まりも強化されています。
    自転車に乗るときは車と同じように道路交通法を守り、安全運転を心がけましょう。


安全運転義務違反は死亡事故につながるもの。しっかり対策しよう

安全運転義務違反は、ドライバーの不注意や判断ミスなどから引き起こされます。死亡事故につながることも多いので、企業として対策を講じなければなりません。安全運転教育や労務管理を進めていくことによって、安全運転義務違反を防ぎましょう。

アルコールチェックの厳格化も、社内で安全運転意識を高めるために有効といえます。株式会社AIoTが提供する『スリーゼロ』は、アルコールチェック管理サービスです。市販のアルコール検知器を使ってアルコールチェックを簡単かつ確実に行い、結果をクラウド上で一元管理できます。

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監修者 宇徳 浩二(うとく こうじ)

2002年シャープ入社。携帯電話のソフトウエア開発部門にて、スマートフォンのシステム開発等従事。
その後、AIソリューションの開発責任者として、シャープのAIoT(AI+IoT)のAI開発をけん引。
2022年AIoTクラウドにてプロダクトマネージャーに就任し、アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』、WIZIoT(ウィジオ)遠隔監視サービスなどのSaaSサービスのプロダクトを創出。
AI、IoTを活用したソリューションやサービスに携わる者として、社内外の講演、セミナーに登壇をするなどAI、IoT、SaaSビジネスに関して発信している。

宇徳 浩二