安全運転管理者は必要ない?ケース別の判断基準や選任しない場合の注意点も解説

一定数の社用車を持つ事業所で選任が必要な「安全運転管理者」。選任が必要な基準は何か、そもそも社用車の数え方がよく分からない、と疑問を持つ担当者も多いでしょう。この記事ではさまざまなケースごとに、安全運転管理者が「必要か」「不要か」を解説。車両を保有している事業所の方はぜひ参考にご覧ください。

  • 2024/11/28 公開

目次

  1. 安全運転管理者は必要ない?選任の基準は?
  2. 【具体例3選】安全運転管理者の選任が「必要」なケース
  3. 【具体例3選】安全運転管理者の選任が「不要」なケース
  4. 副安全運転管理者の選任が必要なケースもある
  5. 【基礎知識】安全運転管理者制度の概要
  6. 安全運転管理者を選任しない場合、とくに注意すべき3つのこと
  7. 安全運転管理者の選任に関するよくある質問
  8. 安全運転管理者制度を理解し安全管理を推進しよう


安全運転管理者は必要ない?選任の基準は?

安全運転管理者の選任義務は、以下のいずれかの条件を満たす場合に発生します。

  • 定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所
  • その他の自動車を5台以上使用している事業所

※原動機付自転車を除く自動二輪は、1台につき自動車0.5台として計算する

安全運転管理者は、企業や団体における安全運転を管理するための重要な役割を担う役職です。社用車を持つ事業所の中でも、安全運転管理者を選任する義務がある事業所と、選任義務がない事業所に分けられます。

選任義務の有無は「使用する社用車の台数」によって判断されます。上記いずれかの条件を満たす事業所では安全運転管理者の選任が必要です。

車両台数の数え方の基準は?

  • 「業務に使う車両であるか」が基準となる
    →リース車両やマイカーであっても対象


【具体例3選】安全運転管理者の選任が「必要」なケース


◾️ 複数の拠点があり、使用する車両が5台以上の事業所の場合

本店で6台、支店で4台を業務に使用 本店のみ選任義務あり
本店で6台、支店で5台を業務に使用 本店・支店ともに選任義務あり

複数の拠点で自動車を使用している場合は、その事業所ごとに安全運転管理者の要・不要が判断されます。判断基準は合計の車両台数ではなく、各事業所が使用する台数です。

たとえば、使用する車両台数が本店で6台、支店で4台の場合を解説します。合計では10台の使用ですが、事業所ごとにカウントするため、車両を6台使用している本店のみ安全運転管理者の選任が必要です。支店では5台未満のため、選任の必要がありません。

本店で6台、支店で5台を使用している場合は、いずれも5台以上使用しているため、本店支店ともに1人ずつの選任が必要です。


◾️ 従業員のマイカー5台以上を業務に使用している場合

従業員のマイカーを業務に使用する場合は、事業者側が「当該車両の賃借権などを有し車両の運行を総括的に支配できる地位にある場合」かつ、5台以上の場合、安全運転管理者の選任が必要になります。

しかし、社有車の本拠地(自動車を管理する拠点)が従業員の自宅である場合は、管理対象にはなりません。「事業者が所有する車両を従業員に貸与し、従業員が自宅で車両を管理・仕事先へ直行直帰している」などはこのケースに当たるため、この場合、安全運転管理者の選任義務はありません。

つまり、事業者側が車両の所有権・賃借権等を有していること、車両が管理されている本拠地が事業所であることが安全運転管理者の管理対象です。


◾️ リース車両5台以上を業務に使用している場合

車両の名義に関わらず、リース車両を業務に使用している場合も選任の対象車として数えます。ただし、選任対象車の対象となる「自動車の使用者」とは、「自動車を使用する権原を有する者で、かつ自動車の運行を総括的に支配する地位にある者」 です。

事業者が車の所有権や賃借権のどちらも持っていず、その運行が通常は従業員の自由になる状態であれば、選任対象車に該当しません。

出典:「使用者に対する道路交通法違反通知取扱要領の制定」



【具体例3選】安全運転管理者の選任が「不要」なケース


◾️ 複数の拠点で使用する車両がそれぞれ5台未満の場合

複数の拠点で使用する車両がそれぞれ5台未満の場合、安全運転管理者の選任は必要ありません。台数の算定は、事業所(自動車の所有の本拠)ごとに行われるためです。

たとえば本店で4台、支店で3台、合計7台使用していても、本店支店ともに5台未満のため、どちらの拠点においても選任の義務はありません。


◾️ 従業員のマイカーを通勤のみに使用している場合

従業員がマイカーを「通勤のみ」に使用している場合は、選任の対象になりません。マイカーを通勤のみに使用している場合、事業者は「自動車を使用する権原を有する者で、かつ自動車の運行を総括的に支配する地位にある者」に当たらないためです。

ただし、マイカーを通勤だけでなく業務にも使用する場合は、自動車の名義に関係なく社用車として台数に含める必要があります。


◾️ 運行管理者を選任している場合

運行管理者を選任している場合、安全運転管理者の選任は不要です。

緑ナンバー(事業用自動車)の事業者は、道路運送法・貨物自動車運送事業法に基づき、車両数等の条件に応じた運行管理者の選任が義務付けられています。すでに運行管理者が選任されている場合、安全運転管理者の選任は不要とされています。

ただし、運行管理者を選任している事業者が、安全管理のために安全運転管理者も追加で選任するのは問題ありません。

また、2022年10月の道路交通法改正により、道路運送法第79条の規定による国土交通大臣の登録を受けた 自家用有償旅客運送者も、安全運転管理者を選任しなくてもよいと定められました。

自家用有償旅客運送とは、バスやタクシーなどの公共交通機関が運行されていない地域で、住民の移動手段を確保するために自家用車を用いて有償で運送するサービスです。自家用有償旅客運送者の運行管理の責任者は、安全運転管理者と同等の業務を行う必要があります。



副安全運転管理者の選任が必要なケースもある

副安全運転管理者とは、安全運転管理者とほぼ同じ業務を行い、安全運転管理者の業務を補助する役職です。

事業所が使用する車両の台数が20台以上40台未満の場合、安全運転管理者に加え副安全運転管理者を1人選任しなければなりません。

40台以上の場合は、20台増すごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要になります。



【基礎知識】安全運転管理者制度の概要


◾️ 安全運転管理者とは

安全運転管理者は、事業所において運転者の安全運転を管理する責任者です。一定台数以上の白ナンバー車両を使用する事業所は、安全運転管理者を選任しなければなりません。

安全運転管理者は、運転者の健康状態や運転技術の確認、法令に基づく報告や記録の作成、運行計画の策定などを通じて交通事故の防止に努めます。運転者に対する安全運転を指導し、事業所全体の安全運転意識を高める役割を担う重要なポジションです。


◾️ 安全運転管理者の選任が義務化された背景

2022年10月の道路交通法改正により、安全運転管理者制度の違反に対する罰則が厳しくなりました。

その背景には、2021年6月の千葉県八街市での飲酒運転事故があります。この事故で児童5人が死傷し、ドライバーが日常的に飲酒運転をしていたことが発覚しました。こういった背景から安全運転管理者制度の重要性が明らかになり、罰則が強化されました。違反時の罰金も大きく増額されています。


◾️ 安全運転管理者制度に違反した場合の4つの罰則

違反内容 罰則
[選任義務違反]
定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所・その他の自動車を5台以上使用している事業所であり安全運転管理者の選任をすべきなのに選任しない。
50万円以下の罰金
[解任命令違反]
公安委員会が自動車の安全な運転が確保されていないと認め、自動車の使用者に対し、当該安全運転管理者等の解任を命じたにもかかわらず、従わない。
50万円以下の罰金
[是正措置命令違反]
公安委員会が自動車の使用者に対し、その是正のために必要な措置をとるべきことを命じたのに、是正措置を行わない。
50万円以下の罰金
[選任解任届出義務違反]
安全運転管理者の選任・解任をしたのに、15日以内に当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する公安委員会に届出をしない。
5万円以下の罰金

出典:e-gov法令検索「道路交通法」

安全運転管理者の選任義務がある事業所で、ルールを怠った場合は、違反内容に応じて罰則が課されます。

具体的には、選任の義務を怠る「選任義務違反」や、解任の命令に従わない場合の「解任命令違反」。また是正措置に従わなかった場合の「是正措置命令違反」、選任や解任の届け出を行わなかった場合の「選任解任届出義務違反」が挙げられます。

これらの違反に対してそれぞれ罰金が下されるため、違反と罰則についてしっかり理解しておきましょう。


◾️ 安全運転管理者の主な業務と役割

  • 運転者の状況把握
  • 安全運転確保のための運行計画の作成
  • 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
  • 異常気象時等の安全確保の措置
  • 点呼等による過労、病気その他正常な運転をすることができないおそれの有無の確認と必要な指示
  • 運転者の酒気帯びの有無の確認(目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いた確認を実施)
  • 酒気帯びの有無の確認内容の記録・保存、アルコール検知器の常時有効保持
  • 運転日誌の備え付けと記録
  • 運転者に対する安全運転指導

出典:e-gov法令検索「道路交通法施行規則」

安全運転管理者は、従業員ドライバーが常に安全に運転できる環境を整える役割を担っています。具体的な業務内容としては、以上のように多岐にわたります。

これらの業務を遂行していないとみなされた場合、公安委員会により安全運転管理者の解任命令や是正命令が下る可能性もあるため注意が必要です。

2023年12月の道路交通法施行規則の改正により、白ナンバーを使用する事業者に検知器を用いたアルコールチェックとその記録の保存が義務付けられました。

このアルコールチェック業務に関しては、任務を遂行しているか特に厳しく見られるでしょう。安全運転管理者は、併せてアルコールチェック義務化に関しても把握しておく必要があります。

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また、多岐にわたる安全運転管理者の業務を効率化するために、アルコールチェックシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。アルコールチェックサービス『スリーゼロ』は、120機種以上の検知器に対応しており、簡単・正確なアルコールチェックを行えます。

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安全運転管理者を選任しない場合、とくに注意すべき3つのこと

安全運転管理者の選任が不要な事業所では、どのように運転者の安全運転を推進すればいいのでしょうか。とくに注意すべき3つのことを説明します。


◾️ 社内で安全運転の重要性や交通ルールを周知する

安全運転管理者の選任が不要な場合、まずは社内における交通ルールの周知徹底が重要です。事故のリスクを減少させ、従業員の安全と会社の信用を守るために、安全運転管理者がいなくても安全運転指導は行いましょう。

最新の交通法規や違反事例を共有し、従業員全員の安全運転への意識を高めることが大切です。安全運転の徹底は、企業イメージの向上にもつながります。


◾️ 社内で「安全運転宣言」を策定する

安全運転宣言を全社員に浸透させることは、安全が優先される企業文化を築くうえで不可欠です。安全運転宣言とは、安全運転を実践するために社内で行う取り組みを明文化した宣言を指します。

社内で「安全運転宣言」を策定し、従業員全体に安全運転の心がけを浸透させましょう。この宣言では、安全運転の基本である「安全運転5則」のおさらいすることも大切です。

また、安全運転指導に活用できる「安全運転のしおり」も見てみましょう。従業員が事故に巻き込まれないように、改めて伝えたい内容をまとめております。

いま従業員が把握すべき「安全運転」のしおり


◾️ アルコールチェックを導入する

安全運転管理者の選任義務がない企業でも、アルコールチェックは重要な安全対策の1つです。近年、社用車による飲酒運転での交通事故が問題視されています。

アルコールチェックの義務がない事業所も、飲酒運転を防ぐための取り組みは行ったほうが会社のためになるでしょう。「アルコールチェック業務を取り入れたいけど、業務負担が気になる・・」という企業はツールの活用がおすすめです。

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安全運転管理者の選任に関するよくある質問

  • Q. 安全運転管理者を一度選任すればその後の手続きは必要ない?
    A. 安全運転管理者を一度選任した後も、その後何か変更があれば速やかに所轄の警察署を経由して公安委員会に報告しなければなりません。例えば、安全運転管理者(副安全運転管理者)の解任(交代)、記載内容の変更が発生した場合、その15日以内に届出を行います。
    届出は警察署の窓口で行うほか、郵送やオンライン申請でも行うことが可能です。
    【安全運転管理者等の選任後に手続きが発生するケース】
    • 選任していた安全運転管理者を解任する場合(解任届)
    • 新しい安全運転管理者を選任する場合(選任届)
    • 選任していた安全運転管理者の記載内容に変更があった場合
    • 事業所の住所等が変更となった場合
  • Q. 安全運転管理者が不在の場合、業務は誰が行う?
    A. 安全運転管理者が不在の場合、副安全運転管理者が業務を行います。副安全運転管理者は安全運転管理者を補佐する役割を担うため、安全運転管理者が不在時は代行して業務を行うことが必要です。
    また、副安全運転管理者を選任していない事業所は、安全運転管理者の業務を補助する者(事業所で独自に指定した者)が代わりに業務を行いましょう。なお、事業所による補助者の指定は、公安委員会への届出は不要です。
  • Q. 安全運転管理者の選任が必要ない事業所もアルコールチェックは行う?
    A. 安全運転管理者の選任が必要ない事業所では、道路交通法改正におけるアルコールチェック義務化の対象にはなりません。しかし、従業員が飲酒事故を起こした場合、企業の信用失墜、損害賠償責任と多くのリスクが伴います。
    事業者による日々のアルコールチェックや定期的な運転者への安全運転指導を行い、事故防止に努めることが推奨されています。
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安全運転管理者制度を理解し安全管理を推進しよう

安全運転管理者の選任は、主に事業所で使用する車両台数によって必要か不要か判断されます。事業所の自動車の使用台数が一定数未満の場合や、運行管理者を選任している場合などは選任が不要です。

安全運転管理者の選任義務がある事業所は、2023年から従業員へのアルコールチェックも義務化されました。対象の事業所はもちろん、安全運転管理者の選任が必要でない事業所も日々のアルコールチェックを実施し、安全運転を実現することが求められているでしょう。

「アルコールチェックの業務負担を減らしたい」という事業所は、アルコールチェックサービス『スリーゼロ』の導入をぜひご検討ください。『スローゼロ』120機種以上の検知器に対応しているため、お持ちの検知器が活用できるでしょう。

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