一定台数以上の自動車を使用する事業所は、従業員の安全運転を確保するために安全運転管理者を選任しなければなりません。では、安全運転管理者になるためには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか。試験を受ける必要はあるのか、選任後の届出方法・法定講習なども併せて確認していきましょう。
- 2024/08/30 公開
目次
安全運転管理者になるための資格要件は?
安全運転管理者になるための要件 |
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安全運転管理者になるための資格要件として、20歳以上で、自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有する者等であり、かつ欠格事項に該当しないことが必要です。副安全運転管理者が置かれる場合、年齢要件は30歳以上となります。
なお、安全運転管理者になるための資格要件は定められているものの、選任にあたって試験などはありません。
自動車の運転の管理に関する実務の経験とは、同僚や部下に安全運転の指導をした経験を指します。また、欠格事項は以下で解説するので見ていきましょう。
安全運転管理者の欠格事項
安全運転管理者の要件を満たしていても、下記の欠格事項に該当する場合は安全運転管理者に選任できません。
- 過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等の解任命令(道路交通法第74条の3)を受けた者
- 以下のいずれかの違反をした日から2年を経過していない者
- ひき逃げ
- 無免許運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転
- 無免許運転にかかわる車両の提供・無免許運転車両への同乗
- 酒酔い・酒気帯び運転にかかわった車両・酒類を提供する行為
- 酒酔い・酒気帯び運転車両への同乗
- 次の交通違反の下命・容認した日から2年を経過していない者
- 酒酔い、酒気帯び運転
- 麻薬等運転
- 過労運転
- 無免許・無資格運転
- 最高速度違反運転
- 積載制限違反運転
- 放置駐車違反
- 自動車使用制限命令違反
- 妨害運転に係る罪
すでに選任されている安全運転管理者に欠格事項が発覚した場合は、解任しなければなりません。
また、安全運転管理者が職務を遂行できない、管理が不適切だと公安委員会に判断された場合、解任命令が出されることが道路交通法第74条の3第6項で定められています。事業所は、安全運転管理者を解任したら解任届を公安委員会に提出する必要があります。
副安全運転管理者の資格要件と欠格事項
資格要件 | 欠格事項 |
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安全運転管理者の欠格事項と同様 |
副安全運転管理者の資格要件は、20歳以上で、自動車の運転の管理に関し1年以上の実務経験を有する者であり、安全運転管理者の欠格事項に該当しないことです。
安全運転管理者の資格要件とは、必要な実務経験の年数のみ異なります。その他の資格要件は、安全運転管理者と同様です。
安全運転管理者を選任したあとの手続き
安全運転管理者を選任したあと、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。ここでは、選任したあとの2つの手続きについて解説します。
◾️ 選任後15日以内に公安委員会へ届け出る
安全運転管理者の選任後は、事業所の所轄警察署を経由して、15日以内に公安委員会へ届け出なければなりません。
公安委員会に届け出るには、直接警察署に届け出る、オンラインで届け出る、郵送で届け出るといった3つの方法があります。都道府県により違いはあるものの、届け出る際は基本的に下記の書類が必要です。
- 記入済みの「安全運転管理者に関する届出書」
- 戸籍抄本又は本籍(外国人にあっては、国籍等)の記載のある住民票の写し
- 運転免許証の写し
- 運転記録証明書(3 年若しくは 5 年のもの)
※3、4は運転免許保持者の場合
なお、安全運転管理者を解任した場合も、同様に15日以内に届け出る必要があるので注意しましょう。
完全運転管理者に関する届出書は、都道府県別にフォーマットがあります。都道府県別のフォーマットは、都道府県警察の手続きサイト(申請書類様式)で取得できるので、検索して確認しましょう。オンラインで申請する場合は、上記の4つの書類をPDFファイルで送信します。
なお、運転記録証明書は自動車安全運転センターにて1枚670円で公布してもらえます。届出を怠ると5万円以下の罰金刑が科せられるので、必ず15日以内に届け出ると覚えておきましょう。
◾️ 安全運転管理者等法定講習を受講させる
安全運転管理者を選任後、事業所は安全運転管理者本人に安全運転管理者等法定講習を受講させる必要があります。
東京都交通安全協会から安全運転管理者等法定講習のお知らせが事業所に郵送されるので、複数ある日程、会場から選択して返送します。日程によってはオンライン受講も可能です。
安全運転管理者等法定講習には、安全運転管理者講習が4,500円、副安全運転管理者講習が3,000円の手数料がかかります。受講しなかった場合でも罰則はありませんが、所轄の警察署により特別診断が入ることもあるので注意しましょう。
安全運転管理者の選任後に再び届出が必要となる場合も
安全運転管理者を選任したあとにも、さまざまなケースで届出が必要となります。主に以下4つのケースが考えられるため、今の段階から想定しておくとよいでしょう。
- 選任していた安全運転管理者を解任する場合(解任届)
- 新しい安全運転管理者を選任する場合(選任届)
- 選任していた安全運転管理者の記載内容に変更があった場合
- 事業所の住所等が変更となった場合
解任届についても選任届と同様に15日以内に届け出る必要があり、届出をしなかったときには5万円以下の罰金が科せられます。また、選任していた安全運転管理者の記載内容とは、氏名や職務上の地位などです。
なお、それぞれの届出が完了していないと安全運転管理者等法定講習を受講できなくなる可能性があるため注意しましょう。
そもそも安全運転管理者とは?
安全運転管理者とは、一定数以上の自動車を持つ事業所で、従業員の安全運転を確保するために必要な業務を行う者です。安全運転管理者は、事業主に代わって事業所の安全運転管理に関する責任を担います。
対象となる事業所は、必ず安全運転管理者を選任し公安委員会に届け出る必要があります。対象となる事業所は以下の通りです。
- 定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所
- その他の自動車を5台以上使用している事業所
安全運転管理者には、2022年4月に施行された改正道路交通法に基づき、アルコールチェックを実施し、その記録を保管する義務があります。主な業務として、アルコール検知器を使ってドライバーの酒気帯びの有無を確認することと、記録を1年間保存することが必要です。
◾️ 副安全運転管理者とは
副安全運転管理者とは、安全運転管理者の業務を補助する役割ですが、実際の業務内容は安全運転管理者とほとんど同じです。
事業所が使用する自動車の台数が20台以上になると、副安全運転管理者を1人選任する必要があります。20台以上40台未満の場合は副安全運転管理者を1人、40台以上の場合は20台増すごとに1人の副安全運転管理者を選任します。
安全運転管理者の選任は事業所の義務
安全運転管理者の選任は白ナンバーの車両を所有する事業所の義務とされており、選任を怠った場合には50万円以下の罰金刑が科せられます。ほかにも、安全運転管理者制度についての違反には、厳しい罰則が科せられるため注意が必要です。
安全運転管理者制度が厳罰化した背景には、白ナンバーのトラックの飲酒運転による事故が影響しています。以下で詳しく解説するため見ていきましょう。
◾️ 安全運転管理者制度が厳罰化した背景
2022年10月の道路交通法改正により、安全運転管理者制度の違反に対する罰則が厳しくなりました。安全運転管理者の義務はさまざまありますが、最近定められた「アルコールチェック義務化」の背景を確認しましょう。
2021年6月、千葉県八街市で発生した交通事故では、飲酒運転の白ナンバートラックが下校中の児童5人を死傷させました。このドライバーは日常的に飲酒運転をしていたことが発覚し、ドライバーはもちろん、勤務先の事業所も管理が不十分だと非難の対象になりました。
この事故がきっかけで事業所の白ナンバー車両の管理不足が注目され、安全運転管理者の義務として、白ナンバー車両のドライバーにもアルコールチェックを実施することになりました。そして、2023年12月にアルコール検知器を利用したアルコールチェックの実施が開始されました。
加えて、安全運転管理者制度の重要性が明らかになり、この制度を違反した場合の罰金も増額されました。
◾️ 安全運転管理者制度を違反した場合の罰則
違反内容 | 罰則 |
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[選任義務違反] 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所・その他の自動車を5台以上使用している事業所で、安全運転管理者を選任する義務があるのに選任していない。 |
50万円以下の罰金 |
[解任命令違反] 公安委員会は安全運転管理者が適切に職務を遂行できないと判断し、使用者に対し、当該安全運転管理者の解任を命じたにもかかわらず、選任を継続したり、再び選任したりしている。 |
50万円以下の罰金 |
[是正措置命令違反] 公安委員会が使用者に対し、その是正のために必要な措置をとるべきことを命じたのに、是正措置を行わない。 |
50万円以下の罰金 |
[選任解任届出義務違反] 安全運転管理者や副安全運転管理者の選任・解任をしたのに、選任した日から15日以内に当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する公安委員会に届出をしていない。 |
5万円以下の罰金 |
安全運転管理者制度を違反した場合、道路交通法に基づき罰金が科されます。もし安全運転管理者の選任をすべき場合で、選任していないのであれば速やかに選任し届出をしましょう。
また、安全運転管理者に義務つけられた業務を遂行することはもちろん、もし解任命令が下された場合はそれに従うなどの基本的なルールも認識しておくことが重要です。
安全運転管理者に関する罰則については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひチェックしてみてください。
安全運転管理者の主な9つの仕事内容
では、安全運転管理者の業務には、主にどのようなものがあるのでしょうか。安全運転管理者等の業務は、道路交通法施行規則第9条の10で下記の通りに定められています。
- 運転者の状況把握
- 安全運転確保のための運行計画の作成
- 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
- 異常気象時等の安全確保の措置
- 点呼等による過労、病気その他正常な運転をすることができないおそれの有無の確認と必要な指示
- 運転者の酒気帯びの有無の確認(目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いた確認を実施)
- 酒気帯びの有無の確認内容の記録・保存、アルコール検知器の常時有効保持
- 運転日誌の備え付けと記録
- 運転者に対する安全運転指導
安全運転管理者の業務内容は、自動車の安全運転という観点から非常に重要であり、安全運転管理者の責任は重大となっています。アルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認は、2023年12月の道路交通法改正によって拡充した業務です。
上記の業務を適切に遂行していないと判断されると公安委員会より安全運転管理者の解任命令や是正命令が発せられ、これに従わない場合は50万円以下の罰金刑に科せられます。
なお、アルコールチェックはアルコール検知器を用いて目視に準ずる方法により点呼確認行ったうえで、その記録を1年間保管する義務があり、日々の業務としては大きな負担となるでしょう。安全運転管理者の負担を軽減するためにも管理システムの積極的な利用がおすすめです。
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安全運転管理者の資格についてよくある質問
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Q.安全運転管理者になるために試験を受ける必要はある?
A. 安全運転管理者になるために、試験を受ける必要はありません。安全運転管理者になる要件さえ満たしていれば、選任されることが可能です。ただし、選任された後には、法定講習を受講する義務があります。 -
Q.1人の安全運転管理者を複数の事業所で選任することはできる?
A. 1人の従業員を複数の事業所で安全運転管理者として選任することは認められません。同じ建物に親会社と子会社が入居している場合や、複数の事業所を同じ従業員が管理している場合でも、安全運転管理者は兼任できないとされています。 -
Q.すでに運行管理者がいる事業所で別に安全運転管理者を選任する必要はある?
A. 道路運送車両法又は貨物自動車運送事業法に基づき、選任した運行管理者がいる場合、安全運転管理者の選任は必要ありません。しかし、安全運転の確保のために、運行管理者に加えて安全運転管理者を選任することは可能です。 -
Q.安全運転管理者以外の者が法定講習を代理で受講することは可能?
A. 法定講習は、道路交通法に基づき、安全運転管理者・副安全運転管理者が受講するものと定められています。そのため、安全運転管理者本人が受講する必要があり、代理受講はできません。
安全運転管理者の負担を削減する取り組みが重要です
安全運転管理者になるためには、年齢と実務経験が資格要件を満たしていることが必要です。選任後の届出方法、安全運転管理者の業務内容も解説したため、事業所及び安全運転管理者はしっかり確認しておきましょう。
従業員が自動車を利用するにあたり、安全運転を確保するための役割を担う安全運転管理者の業務負担は大きいものです。安全運転管理者の負担軽減や、業務効率化のためにも管理システムの利用を検討してみるのもよいでしょう。
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