安全運転管理者とは?アルコールチェック義務化で拡大した業務や専任・届出の必要性、講習について

令和4年4月から、白ナンバー車のアルコールチェック義務化がスタートし、安全運転管理者が目視で酒気帯びの有無を確認することやその記録の保存などが義務づけられました。業務使用の車両による交通事故を防止するため、一定台数以上使用する事業所では安全運転管理者を選任する必要があります。本コラムでは、企業が把握すべき安全運転管理者の選任条件、申請手続き・届出、業務についての3点を中心にご紹介します。

  • 2022/08/19 公開
  • 2022/10/20 更新

目次

  1. 1. 安全運転管理者の選任条件 
    1. ・安全運転管理者制度について
    2. ・安全運転管理者とは
    3. ・安全運転管理者の選任基準
    4. ・安全運転管理者の資格要件 
  2. 2. 安全運転管理者の申請手続き・届出
    1. ・安全運転管理者等法定講習
  3. 3 安全運転管理者の業務
  4. 最後に
  5. 関連コラム


令和4年4月から、白ナンバー車のアルコールチェック義務化がスタートし、「安全運転管理者」の業務・責務が拡大しています。これまで、事業用自動車については、運行管理者が酒気帯びの有無の確認や記録を義務付けられていましたが、今回新たに業務使用の自家用自動車(白ナンバー)に関しても安全運転管理者に対する、アルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認することやその記録の保存などが義務づけられることになりました。
業務使用の車両による交通事故を防止するため、一定台数以上使用する事業所では安全運転管理者を選任し、警察署へ届け出なければなりません。安全運転管理者は、運転者に点呼や日常点検をさせることによる安全運転の確保、運転者の適正の確認や安全教育などを行う義務があります。本コラムでは、安全運転管理者を設置する上で、どういった点に気を付けるべきか?特に企業が把握すべき安全運転管理者の選任条件、申請手続き・届出、業務についての3点を中心にご紹介します



1 . 安全運転管理者の選任条件 

業務上、社用車を使用しなければならない企業は多いでしょう。一定台数以上の自動車を使用する事業所では安全運転管理者の設置が義務づけられています。安全運転管理者の選任条件について詳しく確認していきましょう。



・安全運転管理者制度について

安全運転管理者制度とは、一定台数以上の自動車を使用する事業所において、安全運転管理と安全指導を確立して交通事故防止を図ることを目的とした制度です。昭和40年6月の道路交通法の一部改正により制度化がされました。(道路交通法第74条の3)



・安全運転管理者とは

安全運転管理者とは、企業の安全確認を確保する事業主に代わって安全運転の確保に必要な業務(酒気帯びの有無や安全運転指導等)を行う人を指します。自動車を一定台数以上使用する事業所は、安全運転管理者やそれを補助する副安全運転管理者を選任し、公安委員会に届け出なければならないことになっています。



・安全運転管理者の選任基準

一定台数以上の車両を使用する企業の場合、安全運転に必要な業務を行う安全運転管理者を選任することが義務付けられています。

<安全運転管理者の選任>

  • 5台以上の自動車を使用している事業所
    (※大型・普通二輪車は1台を0.5台と計算、原動機付自転車は除く)
  • 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所

<副安全運転管理者の選任>

  • 20台以上の自動車を使用している事業所
    (選任人数は20台毎に1人追加が必要)

    ※法定台数(5台)未満の事業所においても任意の選任は可能
    本社はもちろん、支社、営業所でも条件に合致すれば、それぞれの事業所ごとに安全運転管理者・副安全運転管理者を選任する必要があります。また、安全運転管理者を選任しなかった場合は、50万円以下の罰金が掛かるため注意が必要です。


・安全運転管理者の資格要件 

次に、企業が安全運転管理者の選任基準を満たした場合、管理者になる人の資格要件を確認する必要があります。安全運転管理者になるために下記資格要件を満たす人を任命してください。


<安全運転管理者の資格要件>

  • 20歳以上(副安全運転管理者が設置されている事業所は30歳以上)
  • 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務経験を有する者
  • 公安委員会の解任命令により解任されたものは、解任の日から2年を経過していること

<副安全管理者の資格要件>

  • 20歳以上の者
  • 自動車の運転の管理に関し1年以上実務経験があること
  • 運転の経験が3年以上あること
  • 公安委員会の解任命令により解任されたものは、解任の日から2年を経過していること

安全運転管理者・副安全運転管理者ともに、上記に加え過去2年以内に以下の違反歴がないことも資格要件に含まれます

  • ひき逃げ事故
  • 酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転、無免許運転、妨害運転
  • 酒酔い運転や酒気帯び運転に対し車両や酒類を提供する行為
  • 酒酔い運転や酒気帯び運転の車両に依頼・要求して同乗する行為
  • 酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許運転、無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反の下命・容認
  • 自動車使用制限命令違反


2. 安全運転管理者の申請手続き・届出

安全運転管理者の手続きに関しては、安全運転管理者を選任した企業が行う必要があります。また、安全運転管理者を選任・解任等行った場合、変更された日から15日以内に自動車が使用されている都道府県の警察署に届け出を提出する必要があります。この届け出は警察署を経由して公安委員会に提出されます。また、選任しても届け出がない場合2万円以下の罰金が発生するため気を付けましょう。安全運転管理者の手続きを行う際は下記4種類の書類を準備しましょう。


<申請書類>

  • 安全運転管理者・副安全運転管理者に関する届出書 1通
  • 安全運転管理者本人の住民票 1通
  • 自動車免許証の写し(表面及び裏面)1通
  • 安全運転管理者本人の運転記録証明書(過去3年間の記録)1通

<届け出方法>

安全運転管理者の届け出には2種類の提出方法があります。
①警察署へ届出(事業所の所在を管轄する警察署に届出)
②電子申請(令和4年1月4日よる運営開始)

(ご参考)
警視庁 安全運転管理者https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kotsu/application/anzenkanri.html
警察庁行政サイトから届出される方へhttps://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kotsu/application/anzenkanri.files/sennin_nagare.pdf



安全運転管理者等法定講習

安全運転管理者は1年に1回、安全運転の技術や知識向上ために「安全運転管理者等法定講習」を受講する必要があります。講習は都道府県ごとに開催日時が異なり、受講する際は所轄の警察署が発表する講習情報を確認しましょう。講習は6時間かけて行うため通知書が届いたら早めに日程を調整する必要があります。なお、会場での受講が難しい場合、都道府県によってはオンライン講習に参加する方法も用意されています。

★受講に必要な書類

  • 講習通知書
  • 講習手数料(安全運転管理者:4,500円/副安全運転管理者:3,000円)
  • 運転免許書等 身分証明書

★注意事項

  • 転勤等により安全運転管理者が交代している場合、交代手続きを済ませてから講習を受講して下さい
  • 安全運転管理者等講習は途中退席ができません
  • 安全運転管理者等の本人が受講して下さい。代理での受講は認められません

安全管理者等法定講習では所轄警察署や安全運転管理者協会専従講師など交通関連の知識が豊富な講師から、業務に必要な知識や技術を学びます。安全運転管理者等法定講習は道路交通法第108条2によって、受講が義務付けられているため必ず受講しましょう。この講習を受講して安全運転管理者として業務を遂行していきましょう。



3 安全運転管理者の業務

企業に代わって運行業務を遂行する安全運転管理者の業務は、安全指導や安全に運行業務ができるよう運転者の管理やサポートを行います。安全運転管理者の業務は道路交通法施行規則第9条の10によって定められており具体的には次のような業務を行う必要があります。

安全運転管理者が義務を守らなかった場合、直接的な罰則はありません。しかし、業務上安全な運転が確保されない際、命令違反とみなされ企業が責任を怠ったと思われないためにも管理者の業務を把握し義務を守りましょう。



最後に

令和4年4月にアルコールチェック義務化が施行後、アルコール検知器の入手含め、交通事故の削減に向け尽力されていると思いますが、安全運転管理者の業務は多岐にわたります。管理者に任せきりになってないでしょうか?万が一、問題が起きた際、責任を負うのは企業です。従業員の安全確保はもちろん、教育含め、事故撲滅に向けた取り組みを会社として示すことが大変重要です。自社の運転状況の把握はもちろん、安全運転管理者が日々どういった業務にあたっているか把握し、無理のない運用体制づくりも重要です。本コラムが、貴社の安全運転管理を見つめなおす機会になれば幸いです。

(出典)



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監修者 宇徳 浩二(うとく こうじ)

2002年シャープ入社。携帯電話のソフトウエア開発部門にて、スマートフォンのシステム開発等従事。
その後、AIソリューションの開発責任者として、シャープのAIoT(AI+IoT)のAI開発をけん引。
2022年AIoTクラウドにてプロダクトマネージャーに就任し、アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』、WIZIoT(ウィジオ)遠隔監視サービスなどのSaaSサービスのプロダクトを創出。
AI、IoTを活用したソリューションやサービスに携わる者として、社内外の講演、セミナーに登壇をするなどAI、IoT、SaaSビジネスに関して発信している。

宇徳 浩二