【安全運転管理者についてわかりやすく解説】講習・届出方法・資格要件など

安全運転管理者とはどのような役職なのでしょうか。業務内容や選任する条件など気になる担当者も多いでしょう。この記事では、この記事では、安全運転管理者になるための資格要件や法定講習、選任後の届出などをわかりやすく解説。自動車の台数の数え方やなど気になるポイントもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 2022/08/19 公開
  • 2024/11/28 更新

目次

  1. 安全運転管理者とは
  2. 安全運転管理者の選任が義務である事業所
  3. 安全運転管理者を選任しなかった場合の罰則
  4. 安全運転管理者になるための資格要件
  5. 安全運転管理者の資格継続には法定講習の受講が必須
  6. 安全運転管理者の届出(期限・必要書類・手続き方法)
  7. 安全運転管理者の主な業務内容
  8. 運転日誌・アルコールチェック記録簿は1年間の保管が義務
  9. 安全運転管理者に関するよくある質問
  10. 安全運転管理者の業務効率化を進めよう


安全運転管理者とは

  • 安全運転管理者とは、事業所において白ナンバーの自動車の安全運転を管理する役職名です。

運転者の酒気帯び確認や点呼などによる運転者の状況確認、運行計画の作成、事故防止のための指導など多岐にわたる業務を担当します。

一定台数以上の白ナンバーの社用車を所有する事業者は、安全運転管理者を選任し、公安委員会に届け出ることが義務付けられています。安全運転管理者の選任が義務である事業所はこちらをご覧ください。

安全運転管理者は、企業内での安全運転意識を高め、交通事故のリスクを減少させるだけでなく、企業が社会的責任を果たすため役割も担っています。

なお、緑ナンバー車両を一定数所有する事業所は、安全運転管理者でなく、運行管理者の選任が必要となります。運行管理者についてはこちらを参考にしましょう。


◾️ 安全運転管理者が求められる背景

安全運転管理者の需要が高まる背景には、交通事故の増加と法令遵守の強化があります。近年、商用ドライバーの飲酒運転により、通行人が複数亡くなる痛ましい事故が相次いでいます。

もともと一定台数以上の自家用自動車を使用する事業所において、安全運転管理者を配置し、交通事故防止を図ることを目的とした安全運転管理者制度が存在しました。

交通事故の多発により、2023年にこの安全運転管理者制度の内容は改正され、安全運転管理者の業務が拡充されることに。例えば、制度改定と同時にアルコール検知器を用いてのアルコールチェックが義務化されました。

企業の所有する車両が関与する事故は、社会的影響が大きく、企業の信用にも直結します。そのため、安全運転管理者の役割はますます重要視されています。

出典:警視庁「安全運転管理者の業務の拡充等」



安全運転管理者の選任が義務である事業所

安全運転管理者の選任が義務である事業所(自動車使用の本拠)は、以下のとおりです。

  • 乗車定員が11人以上の自動車を1台使用している事業所
  • その他の自動車を5台以上使用している事業所

※自動二輪車(原動機付自転車を除く)は1台を0.5台として計算します

これらの事業所ごとに安全運転管理者1名を選任します。また、法定台数(5台)未満の事業所でも、安全運転管理者を任意に選任することは可能です。


◾️ 副安全運転管理者の選任が義務である事業所

副安全運転管理者は、主に安全運転管理者の業務の補助を行います。安全運転管理者だけでなく、副安全運転管理者の選任も義務となる事業所は以下のとおりです。

  • 20台以上の自動車を使用している事業所(選任人数は20台ごとに1人追加が必要)

これは本社だけでなく、支社や営業所でも条件に合致する場合、それぞれの事業所ごとに安全運転管理者・副安全運転管理者を選任する必要があります。



安全運転管理者を選任しなかった場合の罰則

白ナンバーの自動車を一定台数以上使用する事業所には、安全運転管理者の選任の義務があります。白ナンバーとは、自社の業務のために使用する自家用自動車(自家用バスを含む)です。

安全運転管理者の選任を怠った場合、50万円以下の罰金が科せられます。また、公安委員会の解任命令や是正措置命令に違反した場合も、同様に50万円以下の罰金が科せられます。

さらに、選任や解任をした後の届出を怠ると、5万円以下の罰金が科せられるため注意が必要です。そのほか、安全運手管理者制度に関する違反と罰則は以下をご覧ください。


◾️ 安全運転管理者に関する4つの違反と罰則

選任義務違反 安全運転管理者の選任の義務があるのにもかかわらず選任しなかった場合は、「選任義務違反」となり50万円以下の罰金が科せられます。
解任命令違反 公安委員会の安全運転管理者の解任命令に従わず、選任の状態を継続したり、同じ人物を再任したりした場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
是正措置命令違反 公安委員会の是正措置命令に従わず、適切な措置を怠った場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
選任解任届出
義務違反
安全運転管理者の選任や解任を15日以内に管轄の公安委員会に届けなかった場合は、5万円以下の罰金が科せられます。


安全運転管理者になるための資格要件

安全運転管理者、副安全運転管理者の選任にあたり、以下の資格要件があります。

安全運転管理者の資格要件 副安全管理者の資格要件
  • 20歳以上(副安全運転管理者が設置されている事業所は30歳以上)の者
  • 20歳以上の者
  • 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務経験を有する者
  • 公安委員会の解任命令により解任されたものは、解任の日から2年を経過していること
  • 自動車の運転の管理に関し1年以上実務経験を有する者
  • 運転の経験が3年以上ある者
  • 公安委員会の解任命令により解任されたものは、解任の日から2年を経過していること

引用:警視庁ホームページ「安全運転管理者等の資格要件」

安全運転管理者を選任する担当者は、上記の要件を満たす人を選ぶよう注意しましょう。さらに、要件に合致しても後記の「欠落事項」に当てはまる場合は選任できないため、欠落事項がないかも確認が必要です。


◾️ 安全運転管理者・副安全運転管理者になれない人

安全運転管理者、副安全運転管理者の資格要件を満たしていても、下記の違反歴がある人は安全運転管理者・副安全運転管理者になれません。

〈欠落事項〉

過去2年以内に下記の違反歴がある者

  • ひき逃げ事故
  • 酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転、無免許運転、妨害運転
  • 酒酔い運転や酒気帯び運転に対し車両や酒類を提供する行為
  • 酒酔い運転や酒気帯び運転の車両に依頼・要求して同乗する行為
  • 酒酔い運転、酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許運転、無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反の下命・容認
  • 自動車使用制限命令違反

出典:警視庁ホームページ「安全運転管理者等の資格要件」

すでに選任されている安全運転管理者に欠格事項が発覚したら、解任しなければなりません。また、欠落事項に当てはまらなくても、安全運転管理者が職務を遂行できないと公安委員会が判断した場合、解任命令が出されるケースも。

事業所は、安全運転管理者を解任したら解任日から15日以内に解任届を公安委員会に提出する必要があります。



安全運転管理者の資格継続には法定講習の受講が必須

安全運転管理者の法定講習の概要
講習の頻度 1年に1回
講習を
受ける場所
都道府県ごとに異なる(警察署により発表される)
講習の
所要時間
6時間以上10時間以下
講習の内容
  • 道路交通法令や安全運転に関する内容
  • 従業員への安全運転指導に関する内容
受講に必要な
書類
  • 講習通知書
  • 講習手数料(安全運転管理者:4,500円/副安全運転管理者:3,000円)
  • 本人確認書類(運転免許証や保険証など)
受講する際の
注意点
  • 途中退出不可
  • 代理受講できない

安全運転管理者・副安全運転管理者は1年に1回、安全運転の技術や知識向上ために公安委員会が実施する「安全運転管理者等法定講習」の受講が義務付けられています。この講習を「法定講習」と呼びます。

講習の開催日程は、都道府県ごとに異なるので、受講する際は所轄の警察署が発表する情報を確認しましょう。

安全運転管理者講習は6時間以上10時間以下、副安全運転管理者講習は4時間以上8時間以下と受講時間が決まっています。安全運転管理者には講習通知書が届くため、これが届き次第、早めに日程を調整しましょう。

なお、会場での受講が難しい場合、都道府県によってオンライン受講を選択できるケースもあります。

講習は、教本や視聴覚教材などを使って、自動車及び道路交通法令に関する知識や安全運転に必要な知識に関する内容です。ドライバーへの交通安全教育に必要な知識と技能、安全運転管理に必要な知識と技能も学びます。

講習は、本人が受講しなければならず、途中退出はできません。現状、受講しなかった場合の罰則はありませんが、最新の法令知識や交通事故情勢についての情報を得るために必ず受講しましょう。

出典:e-GOV法令検索「道路交通法108条の2」



安全運転管理者の届出(期限・必要書類・手続き方法)

安全運転管理者等の選任や変更があった場合は、決められた期日以内に届け出る必要があります。ここでは、届出の期限や必要な書類、手続き方法を解説します。


◾️ 届出の期限:選任から15日以内

安全運転管理者を選任した企業は、安全運転管理者の届け出を行う必要があります。選任を行ったのち、その15日以内に管轄の警察署に届け出を提出しましょう。

この届け出は警察署を経由して公安委員会に提出されます。選任しても届け出がない場合、5万円以下の罰金が発生するため、必ず期限内に届け出るようにしましょう。


◾️ 届出に必要な書類:4つの書類が必要

安全運転管理者の手続きを行う際は下記4種類の書類を準備しましょう。

<申請書類>

  • 安全運転管理者・副安全運転管理者に関する届出書 1通
  • 戸籍抄本又は本籍(外国人にあっては、国籍等)の記載のある住民票の写し 1通
  • 運転免許証の写し(表面及び裏面)1通
  • 安全運転管理者本人の運転記録証明書(過去3年もしくはの記録)1通

※運転免許証と運転記録証明書は免許保持者のみ

安全運転管理者に関する届出書に関しては、都道府県によってフォーマットが異なります。届け出る際は、自社を管轄する警察署のフォーマットを用意してください。

また、運転記録証明書は、自動車安全運転センターに申請し発行してもらいます。ゆうちょ銀行・郵便局か、センター事務所の窓口で申し込み可能です。オンライン申請でも取得できます。

なお、オンラインで届け出る場合は、必要書類をすべてPDF化して添付するようにしましょう。


◾️ 届出の方法:3種類の手続き方法がある

安全運転管理者の届け出る方法は3種類あります。

  1. 警察署へ届出(事業所の所在を管轄する警察署に届出)
  2. 電子申請(令和4年1月4日より運営開始)
  3. 郵送での届出

届け出る際は法令遵守を意識し、正確かつ迅速な手続きを心掛けましょう。

なお、届出が必要になるのは安全運転管理者を選任したときのみではありません。届出が必要となるその他のケースは以下の通りです。

選任以外で届出が必要となる場合は?

  • 管理者の変更や企業の所在地変更
  • 管理者が長期不在となる場合
  • 企業の車両台数が増減した場合

→これらの場合も15日以内に届出を行うことが求められる



安全運転管理者の主な業務内容

運転者に関する業務 運行に関する業務 記録に関する業務
  • 運転者の状況把握(点呼点検)
  • アルコール検知器を用いた酒気帯びチェック
  • 安全運転の指示
  • 安全運転指導
  • 運行計画の作成
  • 交代要員の配置
  • 異常気象時等の安全確保の措置
  • 運転日誌の備え付け
  • 運転日誌の記入指示
  • 運転日報の記入
  • 記録の整理、保存
  • 運転者の運転免許管理

安全運転管理者の業務内容は大まかに、「運転者に関する業務」「運行に関する業務」「記録に関する業務」の3つの種類があります。昨今の交通事情を鑑みて、道路交通法及びその施行規則が段階的に改正され、安全運転管理者の役割や責任が拡充されている段階です。

この中でも、近年はアルコールチェック業務が安全運転管理者における重要な業務とされています。先ほどもお伝えした通り、道路交通法施行規則の改正により、2022年4月1日から白ナンバー自動車のアルコールチェックが義務化されました。

出典:警視庁「安全運転管理者の業務の拡充等」

アルコールチェック義務化については、以下の記事で分かりやすく解説しているため、企業の担当者はチェックしておきましょう。



運転日誌・アルコールチェック記録簿は1年間の保管が義務


◾️ 運転日誌

安全運転管理者には、アルコールチェック義務化以前より、運転日誌の記録も義務付けられています。(出典:G-GOV法令検索「道路交通法施行規則第9条の10の8項」
具体的には、運転状況を把握する書類を備え付けておき、運転終了した運転者に記入させる必要があります。なお運転日誌の保管期間は1年と定められております。

<運転日誌の必要項目>

  1. 運転者名
  2. 運転開始と終了の日時
  3. 運転した距離
  4. その他自動車の運転状況を把握するための必要な事項

◾️ アルコールチェック記録簿

アルコールチェック義務化により、安全運転管理者は、アルコール検知器で運転者の酒気帯びの有無を確認し、その内容を1年間記録・保存することが義務付けられています。

<アルコールチェック記録簿の必要項目>

  1. 確認者名
  2. 運転者名
  3. 運転者が業務で使用する自動車の自動車登録番号又は識別できる記号・番号等
  4. 確認の日時
  5. 確認の方法

※対面での確認でない場合は確認方法を具体的に記載

  1. 酒気帯びの有無
  2. 指示項目
  3. その他必要な事項

安全運転管理者は、アルコールチェック義務化に伴い、従来からの「運転日誌」の記録管理に加え、「アルコールチェック記録簿」の記録管理も必要になりました。

記録管理する項目が増えたため、それらをバラバラに紙管理していると業務負担が増えてしまいます。業務効率化のために、「アルコールチェク記録簿」と「運転日誌」を同時に管理できるサービス導入を検討してみましょう。

アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』を導入いただくことで、日々のアルコールチェックの実施や記録・保存、確認業務が簡単に行えます。120機種以上のアルコール検知器に対応しているため、お手持ちの検知器で手軽にご利用いただけます。

クラウド上で一元管理できるため、ドライバーの直行・直帰時のアルコールチェックも遠隔で管理が可能です。アルコールチェック業務を簡単・確実に行うため『スリーゼロ』の導入をぜひご検討ください。

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安全運転管理者に関するよくある質問

  • Q. 社用車の台数が5台未満なら、安全運転管理者の選任は必要ない?
    A. 社用車の台数が5台未満なら、安全運転管理者の選任は必要ありません。使用の本拠(本店、支店、営業所など)ごとに台数を算定します。
    たとえば、本店で4台、支店で3台の使用ならどちらも選任は不要です。また、使用する台数が減り5台未満になった場合は、安全運転管理者を解任しても問題ありません。
  • Q. リースやマイカー、カーシェアリングの社用車は台数に含める?
    A. 車両の名義にかかわらず、リースやマイカー、カーシェアリングの社用車であっても、業務に使用している場合は社用車として台数に含まれます。ただし、通勤で使用しているだけのマイカーは台数に含めません。
    「業務で使用しているか」が社用車として台数に含むか否かの判断基準になります。
  • Q. 安全運転管理者講習を受けないとどうなる?
    A. 現状、安全運転管理者講習を受けなかった場合の罰則はありません。ただし、都道府県によっては、未受講事業者に対する特別診断を実施する可能性があります。
    特別診断では、当該事業所の安全運転管理者等が、所轄の警察署において安全運転管理に関して質問されたり書類提出を求められたりします。
    また、講習を受けないと法令知識や交通事故情勢についての最新情報が得られず、自社の安全管理に悪影響が出る可能性があるため必ず受講しましょう。
  • Q. 安全運転管理者は何人必要?
    A. 安全運転管理者は、選任義務対象の事業所(自動車使用の本拠)ごとに1人選任する必要があります。使用している自動車の台数が10台でも100台でも、1人選任すれば問題ありません。また、副安全運転管理者は20台ごとに1人の選任が必要です。
  • Q. 安全運転管理者を外部に業務委託できる?
    A. 安全運転管理者に外部の業務委託契約者を選任できます。道路交通法第74条では安全運転管理者が雇用関係でなければならないとは明記されていないためです。

    出典:G-GOV法令検索「道路交通法」

    社内で安全運転管理者を選任するのが難しい場合、外部の業務委託先や派遣社員からの選任も検討してよいでしょう。ただし、業務委託した場合、安全運転を確保する対応がきちんとされていることが重要です。
    その他、安全運転管理者やアルコールチェック義務化について疑問が残る方は、以下資料をチェックしてみましょう。Q&Aを30問以上まとめております。

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安全運転管理者の業務効率化を進めよう

安全運転管理者は、企業において安全運転の推進に欠かすことのできない役職です。一定台数以上の白ナンバー自動車を保有する事業所で選任が義務付けられています。

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監修者 宇徳 浩二(うとく こうじ)

2002年シャープ入社。携帯電話のソフトウエア開発部門にて、スマートフォンのシステム開発等従事。
その後、AIソリューションの開発責任者として、シャープのAIoT(AI+IoT)のAI開発をけん引。
2022年AIoTクラウドにてプロダクトマネージャーに就任し、アルコールチェック管理サービス『スリーゼロ』、WIZIoT(ウィジオ)遠隔監視サービスなどのSaaSサービスのプロダクトを創出。
AI、IoTを活用したソリューションやサービスに携わる者として、社内外の講演、セミナーに登壇をするなどAI、IoT、SaaSビジネスに関して発信している。

宇徳 浩二